2026.10.26

屋根裏から出た約120年前のカルティエのブローチ 底が平らな「ローズカット」は今のダイヤと何が違う?専門家が解説

濃いグレーの石の台の上に、上部が三角の面でドームのように盛り上がった、底の平らな透明なダイヤモンドの裸石が一つ置かれている

英国ウスターシャー州の住宅の屋根裏で、数十年しまわれていた祖母のジュエリーが見つかり、2026年10月21日にロンドンの競売にかけられた201ロットが、総額約1億740万円で落札されたと報じられています。

目玉は、1905年ごろに作られたカルティエのリボン形のブローチでした。そこに留められていたのは、オールドカットとローズカットという、古い時代のカットのダイヤモンドです。

とくにローズカットは、今のダイヤとは底の形から違います。作りが違うと、光り方や見え方はどう変わるのでしょうか。専門家の視点で整理します。

参考記事
Malvern Observer「Hidden treasure: Malvern jewellery collection fetches £506,750」
Malvern Observer:https://malvernobserver.co.uk/news/hidden-treasure-malvern-jewellery-collection-fetches-506750-65278/

屋根裏の201ロット、目玉は約120年前のカルティエのブローチ

現地紙のMalvern Observerによると、ジュエリーは英国ウスターシャー州モールバーンの住宅で、家の片付けの際に屋根裏から見つかりました。現在の所有者の祖母が、生涯をかけて集めたものとされています。

ロンドンのオークションハウスElmwood’s(エルムウッズ)が競売にかけた201ロットは、200年以上にわたるジュエリーのデザインを含むものでした。当初の評価は15万ポンド(約3,180万円)でしたが、落札総額は50万6,750ポンド(約1億740万円)と、3倍を超えたと報じられています。

その中で最も注目されたのが、1905年ごろのカルティエのダイヤモンドのブローチです。リボンを結んだ形で、イエローゴールドとシルバーで作られ、全体にオールドカットとローズカットのダイヤが留められています。推定額は1,000〜1,500ポンド(約21万〜32万円)でしたが、9,375ポンド(約199万円)で落札されたと伝えられています。

報道では「オールドカット」とだけ書かれ、どの種類のカットかまでは示されていません。古いカットの一つ、オールドマインカットについては、「テイラー・スウィフトの婚約指輪で注目の『オールドマインカット』」で解説しています。

なお、落札額が推定額を大きく上回った理由は報じられていません。カットの種類だけで価格が決まったとは言えません。

ローズカットとは、どんなカットか

濃いグレーの背景の前で、透明な台に載せた2つのダイヤの裸石を真横から写した写真。左は底が平らで上が低いドーム形、右は下に向かって尖った形

GIA(米国宝石学会)によると、ローズカットは16世紀にさかのぼる古いダイヤモンドのカットです。底が平らで、上部は三角形の面が集まったドーム状になっています。代表的なものは12面や24面で、バラのつぼみのような形が名前の由来です。

今のダイヤの主流であるラウンドブリリアントカットと比べると、違いは次のとおりです。

見るところ今のラウンドブリリアントカットローズカット
底下に向かって尖る(パビリオン)平ら
上部平らなテーブルの周りに面が並ぶ三角の面が頂点に集まるドーム形
面の数57または58代表的な形で12〜24ほど

ラウンドブリリアントは、上部(クラウン)、外周(ガードル)、下部(パビリオン)の3つの部分で組み立てられています。ローズカットには、このうち下に向かって尖るパビリオンがありません。ここが、光り方の違いにつながります。

ローズカットは、今のダイヤと輝き方がどう違う?

今のラウンドブリリアントは、石に入った光が下側のパビリオンの面で反射し、上へ戻ってくるように、面の角度と比率が組まれています。ローズカットは底が平らで、光を内側で反射させて上へ返す下側の面を持ちません。

GIAも、ローズカットには今のカットのような強いブリリアンス(白い光の輝き)やファイア(光が虹色に分かれて見える輝き)はないとしています。そのかわりに、ドーム形の面が光を受けて生まれる、つややかな光沢と控えめなファイアが魅力だと説明しています。

この作りの違いは、光り方のほかにも、見え方に2つの特徴を生みます。

同じ重さでも、上から見ると大きく見える

ローズカットは底が平らで、厚みが少ないカットです。GIAによると、そのため同じカラット(重さ)のほかのカットより、上から見たときに大きく見えます。見た目の大きさから重さを推し量ると、実際より重く見積もってしまうことがあります。

色と内包物が見えやすい

GIAは、ローズカットは面の並びが開いていて深さが浅いため、色(カラー)と透明度(クラリティ)が見えやすいとしています。石の中の小さな結晶や傷などの内包物も目に入りやすくなります。一方で、ローズカットでは内包物があることも、このカットの個性として受け止められることが多いと説明しています。

専門家の視点で読み解くと

大きく見える、内包物が見える、きらめきが控えめ。どれも、ローズカットという作りから生まれる見え方です。今のダイヤを見るときの感覚のまま、見た目の印象を重さや品質に置き換えると、読み違えることがあります。重さは見た目の大きさで決めず、色と透明度は、光を返す下側の面がないという作りを踏まえて見る必要があります。

古いジュエリーの小さなダイヤを見るときに

濃紺の布の上に置かれた古い花形のブローチの表側。小さく平たいダイヤが、ふちを銀色の金属で囲む留め方でいくつも並んでいる

受け継いだ古いブローチや指輪に、小さく平たいダイヤがいくつも留まっていることがあります。上部がドームのように盛り上がって三角の面が並び、底が平らな作りであれば、ローズカットの可能性があります。

今回のカルティエのブローチについては、報道された情報だけではダイヤの品質や重さまで判断できません。手元の品は実物を確かめられますが、それでも分かることには限りがあります。確かめるときは、次の2点に注意が必要です。

  • 留め方:GIAによると、ローズカットは低く留める方法や、石のふちを金属で囲む留め方、裏に箔を当てる留め方と組み合わされることが多いカットです。こうした留め方では、石の裏側を確かめにくいことがあります
  • 重さ:上から大きく見えるため、見た目だけでは重さを判断できません

ローズカットについて、よくある疑問

Q. ローズカットのダイヤは、今も作られている?

現代のジュエリーにも使われています。GIAは、ローズカットがアンティークのデザインだけでなく、現代のジュエリーでも人気を高めていると紹介しています。そのため、ローズカットであることだけで、石が作られた時代を判断することはできません。

Q. ローズカットは、ダイヤ以外の宝石にもある?

あります。GIAの学術誌『Gems & Gemology』では、17世紀後半に作られた教会の儀式用の装身具や宝物に、ダイヤ以外の色のある宝石をローズカットにした例が報告されています。

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SHINKAは、宝石買取に特化した専門店です。古いジュエリーや、鑑別書・鑑定書のない品物も査定・買取できます。

査定では、宝石だけでなく、貴金属や作り、状態も含めて、ジュエリー全体を確認します。原則としてお客様の目の前で査定し、どこを見てその評価になったのかをご説明します。

古いジュエリーに留まったダイヤがどんなカットで、どう評価されるのか、まずは価値をご確認ください。

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