2026.10.25

ラピスラズリの和名は瑠璃?青金石?|2つの名前の違いと瑠璃色・英語名の由来

光沢のある面に置いた、金色の粒が散る濃い青のラピスラズリを磨いた球の写真

「ラピスラズリの和名」を調べると、「瑠璃」と書くページと「青金石」と書くページがあり、どちらが正しいのか迷いやすいところです。

先に結論をお伝えします。

ラピスラズリの和名は「瑠璃(るり)」で、「青金石(せいきんせき)」とも呼ばれます。どちらも辞書や事典に載っている呼び名で、一方が誤りというわけではありません。違うのは使われ方です。地学事典によると、瑠璃は古くから青い宝石を指してきた言葉で、ラピスラズリの直接の和名としても使われています。一方の青金石は、磨くと青い地に金色の斑点が輝くことから付いた名前で、博物館の解説ではラピスラズリの青をつくる鉱物「ラズライト」の和名として、GIA(米国宝石学会)の日本語の解説でもその青い鉱物の名前として使われています。

この記事では、2つの和名の使われ方の違いを、辞書・事典・博物館の記述にもとづいて整理します。あわせて、よく一緒に調べられる「瑠璃色」との違いや、英語名の由来も扱います。石言葉や効果ではなく、名前そのものの話です。ラピスラズリがどんな石なのか(成分や産地)は、「ラピスラズリとは」の記事で詳しく説明しています。

ラピスラズリの和名は「瑠璃」と「青金石」|どちらも正しく、使われ方が違う

同じ濃い青のラピスラズリのカボションを入れた2枚のカード。瑠璃は意味の広い言葉、青金石は鉱物名にも使われることを示す図

ラピスラズリを日本語で呼ぶ名前として、辞書・事典には「瑠璃」と「青金石」の両方が載っています。ただし、2つの名前は指す範囲が少しずつ違います。資料ごとの書き方を並べると、次のとおりです。

呼び名ラピスラズリを指す使い方それ以外の使い方
瑠璃(るり)デジタル大辞泉は「ラピスラズリのこと」と説明。地学事典は、ラズライト(青金石)やラピスラズリの直接の和名として使われるとする仏教でいう七宝の1つである青い宝石、「瑠璃色」の略、ガラスの古い呼び名(デジタル大辞泉)
青金石(せいきんせき)デジタル大辞泉・日本大百科全書・世界大百科事典は、ラピスラズリを「青金石ともいう」と説明青い鉱物ラズライト(lazurite)の和名(神奈川県立生命の星・地球博物館・地学事典・GIAの日本語の解説)

つまり、どちらの名前もラピスラズリを指して使われます。そのうえで、

  • 瑠璃は、ラピスラズリ以外にも宝石・ガラス・色を指してきた、意味の広い言葉
  • 青金石は、宝石としてのラピスラズリの別名であると同時に、鉱物の名前としても使われる言葉

という違いがあります。「和名は瑠璃」と書くページも、「和名は青金石」と書くページも、それぞれの使い方の一方を取り上げていると考えれば、食い違いの理由がわかります。

「瑠璃」はもともと何を指していたか|七宝の青い宝石とガラスの古称

左に不透明な濃い青のラピスラズリの丸玉、右に透き通った濃い青のガラス玉を入れた2枚のカード。瑠璃という言葉が石とガラスの両方を指してきたことを示す図

辞書に載る「瑠璃」の意味

デジタル大辞泉は、「瑠璃」の意味として次のものを挙げています。

  • 七宝の1つである青色の美しい宝石:梵語(サンスクリット)の vaiḍūrya を音写した「吠瑠璃(べいるり)」の略。赤・緑・紺・紫色などもあるという
  • ラピスラズリのこと
  • 「瑠璃色」の略
  • ガラスの古い呼び名

最初に挙げられているのは、ラピスラズリではなく仏典に出てくる青い宝石としての意味です。地学事典も、瑠璃は古来、青色の宝石・貴石を指した言葉で、ラズライト(青金石)やラピスラズリの直接の和名としても使われる、と説明しています。

七宝の「瑠璃」は、ラピスラズリと言い切れるか

世界大百科事典には、ラピスラズリについて「日本でも瑠璃と称して七宝の一つに数えられ」たと記されています。

一方で、同じ世界大百科事典の「七宝」の項は、七宝の名称は経典によって多少異なると説明しています。挙げられている法華経・大無量寿経・阿弥陀経の例には、いずれも金・銀とともに瑠璃が入っていますが、この項は続けて、これらの宝石が具体的に何を指すかを含め、不明な点も少なくないと述べています。

このため、「仏典の瑠璃は、もともとラピスラズリのことだった」と断定することはできません。事典の記述から言えるのは、瑠璃は古くから青い宝石を指す言葉で、日本ではラピスラズリをその名で呼び、七宝の1つに数えてきたというところまでです。いつから、どのような経緯でラピスラズリを瑠璃と呼ぶようになったのかは、事典には示されていません。

ガラスを指す「瑠璃」

「瑠璃」には、ガラスを指す使い方もあります。世界大百科事典によると、中国にはガラスを指す言葉がいくつもあり、日本で採用されたのが「琉璃」または「瑠璃」でした。早い使用例として、734年(天平6年)の「造仏所作物帳」に見える「琉璃雑色玉」が挙げられています。

古い記録や品物の名前に「瑠璃」とある場合、それがラピスラズリを指すのか、ガラスや別の青い宝石を指すのかは、名前だけでは決められないということです。

「青金石」の由来と、鉱物名としての使われ方|ラズライトとアウイン(藍方石)

左に金色の粒が混じる濃い青のラピスラズリの原石、右に白い母岩についた藍色の天藍石の結晶を入れた2枚のカード。カタカナで同じラズライトと書かれる2つの鉱物を示す図

「青金石」という名前の由来

青金石の名前は、ラピスラズリの見た目から付いています。

  • デジタル大辞泉:ラピスラズリは黄鉄鉱が混じり、磨くと濃い青地に金色の斑点が輝くので、青金石ともいう
  • 日本大百科全書:宝飾品として好まれるのは黄鉄鉱が混じるもので、磨くと濃い青地に金色の斑点が輝いて美しい。このため青金石の名もある

金色の斑点の正体は、パイライト(黄鉄鉱)という別の鉱物です。GIAも、ラピスラズリに見られる金属のように光る斑点を黄鉄鉱と説明しています。つまり「青金石」は、青い地に金色が散る、宝飾品として好まれてきたラピスラズリの姿を表した名前です。

鉱物の名前としての「青金石」

青金石は、鉱物の和名としても使われています。神奈川県立生命の星・地球博物館は、アフガニスタン産の標本について、ラズライト(lazurite)の和名を青金石とし、一般にはラピスラズリの名前で知られていると紹介しています。地学事典やGIAの日本語の解説も、ラピスラズリの青をつくる鉱物を青金石と表記しています。

ここで紛らわしいのが、カタカナの「ラズライト」と、ほかの鉱物名との関係です。

カタカナ表記英語の綴り和名ラピスラズリとの関係
ラズライトlazurite青金石ラピスラズリの青をつくる鉱物として、GIA・博物館が説明に使う名前
ラズライトlazulite天藍石(てんらんせき)綴りの違う別の鉱物の名前。カタカナでは同じ表記になる(色名がわかる辞典)
アウインhaüyne藍方石(らんぽうせき)国立科学博物館は、アフガニスタン産のラピスラズリも主にこの鉱物でできていると説明

国立科学博物館は2026年2月の発表で、有名なアフガニスタンのラピスラズリも主に藍方石(アウイン)から構成されていると説明しています。青い鉱物の名前は、GIAの解説では「ラズライト(青金石)」、国立科学博物館の発表では「藍方石」と、資料によって書き方が異なります。この点は「ラピスラズリとは」の記事で詳しく整理しています。藍方石の結晶そのものについては、アウイナイトの記事で紹介しています。

和名を調べるうえで押さえておきたいのは、「青金石」と書かれていれば、ラピスラズリの別名か、鉱物ラズライトの和名のどちらかだということ、そしてカタカナの「ラズライト」だけでは、青金石か天藍石かを区別できないということです。

瑠璃色との違い|色の名前としての瑠璃とウルトラマリン

磨く前のラピスラズリの原石と、白い小皿に盛った鮮やかな青い顔料の粉を並べた写真。ラピスラズリからウルトラマリンの顔料が作られたことを示している。画像内の文字は「ラピスラズリ」「ウルトラマリン」

「瑠璃色」は、石の名前ではなく色の名前です。辞書では次のように説明されています。

  • デジタル大辞泉:紫色を帯びた濃い青色
  • 日本国語大辞典:瑠璃のような色。紫がかった紺色。紺碧色。初出の例として竹取物語の「るりいろの水」が挙げられている
  • 色名がわかる辞典:JISの色彩規格では「こい紫みの青」。宝石の瑠璃のような、紫みを帯びた濃い青

ウルトラマリンと瑠璃色

ラピスラズリと関係の深い色の名前に、ウルトラマリン(ウルトラマリンブルー)があります。色名がわかる辞典によると、ウルトラマリンブルーはラピスラズリのような鮮やかな青を指す色名で、「ウルトラマリン」はヨーロッパの外から海を越えてやってきたという意味です。19世紀からは人工的に作れるようになりました。同じ辞典は、ウルトラマリンブルーの和名は瑠璃色とし、JISの文章表現は同じ「こい紫みの青」でも、数値で表すと瑠璃色のほうが少し青みが濃いと説明しています。

GIAによれば、ルネサンスの画家たちはラピスラズリから青い顔料ウルトラマリンを作りました。日本でも、岩絵の具の群青はラピスラズリを粉末にしたもので、最近は合成品で代用されていると日本大百科全書に記されています。

石の色と、色名の「瑠璃色」は同じとは限らない

ラピスラズリの石そのものの色には幅があります。GIAによると、わずかに緑みを帯びた青から紫みを帯びた青まであり、淡い青のものもあります。「瑠璃色」という色名は、紫みを帯びた濃い青を指す言葉で、すべてのラピスラズリがその色をしているわけではありません。「瑠璃色との違い」は、石の名前(ラピスラズリ・瑠璃)と、色の名前(瑠璃色)の違いと整理できます。

英語名 Lapis Lazuli の由来|ラテン語の「石」とペルシア語の「青」

左にラピスラズリの原石、右に濃い青の磨いた面の拡大を入れた2枚のカード。ラピスはラテン語で石、ラズリはペルシア語で青を意味することを示す図

英語名はLapis Lazuli(ラピスラズリ)で、日本でもこの名前がそのまま使われています。

名前の成り立ちについて、デジタル大辞泉は「ラピス」はラテン語で石、「ラズリ」はペルシア語で青の意味と説明しています。世界大百科事典も、ペルシア語で紺碧色を意味する「lāzhward」に、ラテン語で石を意味する「lapis」をつけたものとしています。語源をアラビア語と書くページもありますが、デジタル大辞泉と世界大百科事典は、いずれもペルシア語の語に由来すると説明しています。

名前の意味をそのまま日本語にすると「青い石」です。「瑠璃」は青い宝石を指す言葉、「青金石」は青い地に金色が散る姿を表した名前です。英語名も2つの和名も、いずれも青い石であることに結びついた名前です。

表記だけで石は決まらない|「瑠璃」「青金石」「ラズライト」と書かれた品

光沢のある面に置いた、金色の枠に濃い青のラピスラズリを留めたペンダントの写真。画像内の文字は「名前より石そのもの」

ここまで見てきたように、ラピスラズリの呼び名には、ほかのものを指す使い方が重なっています。箱や説明書き、古いタグに名前が書かれていても、名前だけで中身の石を確定することはできません。

  • 「瑠璃」:ラピスラズリのほかに、ガラスの古い呼び名や、七宝の青い宝石を指す使い方がある
  • 「ラズライト」:青金石(lazurite)と天藍石(lazulite)が、カタカナでは同じ表記になる
  • 「青金石」「ラピスラズリ」:名前が正しくても、GIAによると、色をよく見せるための染色や、ワックス・オイルを染み込ませる処理があり、ガラス・プラスチック・セラミックの模造品もある

GIAは、こうした処理は宝石学的な検査で検出できるとしています。GIAはラピスラズリの鑑別を行い、鑑別書には天然かどうかと、検出できる処理が記載されます。

SHINKAでは、石の名前の表記だけでなく、石そのものの様子、枠の貴金属・デザイン・状態・鑑別書の有無まで含めて、ジュエリー全体として総合的に査定します。信頼できる鑑別機関の鑑別書がある場合は、記載された石種を重要な確認根拠として扱います。宝石全般について、処理の可能性も評価要素として見ますが、断定はしません。

箱に書かれた名前と中身が合っているかわからない品や、天然かどうかがはっきりしない品も、そのまま査定・ご相談をお受けしています。鑑別書がなくても構いません。

まとめ|ラピスラズリの和名を正しく使い分ける

  • ラピスラズリの和名は「瑠璃」で、「青金石」とも呼ばれます。どちらも辞書・事典に載る呼び名で、一方が誤りではありません
  • 瑠璃は、七宝の青い宝石・ガラスの古称・色名も指してきた意味の広い言葉です。七宝の瑠璃が具体的に何を指したかには不明な点もあると事典は述べています
  • 青金石は、磨くと青地に金色の斑点が輝くことから付いた名前で、博物館などでは鉱物ラズライトの和名としても使われます。カタカナの「ラズライト」は天藍石と同じ表記になる点に注意が必要です
  • 瑠璃色は色の名前(紫みを帯びた濃い青)で、色名がわかる辞典によるとウルトラマリンブルーの和名でもあります。石そのものの色には幅があります
  • 英語名 Lapis Lazuli は、ラテン語の「石」とペルシア語の「青」から成る名前です
  • 箱や説明書きの名前だけで石は確定できません。石そのものとジュエリー全体を見ることが大切です

お手元の品の名前が「瑠璃」でも「青金石」でも、あるいは何も書かれていなくても、石そのものを一度見せていただけませんか。石について気になることも含めて、わかるようにご説明します。

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