「K18」と刻印され、手に持った重さにも違和感がなければ、本物の18金だと思ってしまうかもしれません。
しかし警視庁がいま注意を呼びかけている偽造ネックレスは、18金と比重が近い「タンタル」というレアメタルに、金メッキを施したものでした。K18の刻印があり、重さも18金らしく見えても、それだけでは本物と判断できない場合があります。
なぜ見抜きにくいのか。刻印・比重・成分検査という3つの確認方法の違いから解説します。
参考記事
リユース経済新聞「警視庁、買取店に警戒呼びかけ」
リユース経済新聞:https://www.recycle-tsushin.com/news/detail_13273.php
警視庁が「比重だけでは難しい」とした偽の18金
報道によると、警視庁は2026年9月4日、タンタルに金メッキを施した偽造ネックレスが首都圏の複数の質店に持ち込まれたことを明らかにしました。同様の手口は6月から8月にかけて、東京を含む1都7県で確認されたと報じられています。
偽造品を持ち込んだ人は複数の買取店で売却し、後日、そのうちの一つから偽物だったとして返金を求められたと報じられています。金を日常的に扱う買取店でも、一度は買い取っていたことになります。
警視庁は買取店に対し、比重測定だけでは判別が難しいとして、成分検査などもあわせて活用するよう求めました。
先に整理|3つの確認方法は、見ているところが違う
今回の話を理解するうえで大切なのは、金製品の確認方法によって、分かることが違うという点です。
| 確認方法 | 分かること | 分からないこと |
|---|---|---|
| K18の刻印 | K18として表示されていること | 中身まで本当にK18か |
| 比重 | 品物全体の重さと体積の関係 | 表面と内部が同じ素材か、内部がどうなっているか |
| 蛍光X線分析(成分検査の一つ) | 主に表面付近の成分 | 内部まで同じ成分か |
つまり、どれか一つだけでは、「表面は金、中身は別の金属」という構造を確かめきれません。ここから、それぞれを順に見ていきます。
比重が近いと、なぜ見分けにくいのか
比重とは、ある物の重さが、同じ体積の水の何倍かを表す数値です。金属ごとにおおよそ決まった値があるため、重さと体積を測れば、何の金属かを推測する材料になります。
主な値は次のとおりです。
- 純金:約19.3とされます
- 18金:金を75%含む合金で、残りの銀や銅などの配合によって幅があり、一般に15〜16前後とされます
- タンタル:約16.6です
つまり、タンタルは重さの性質が18金に近いため、重さと体積を調べただけでは見分けにくいのです。
もう一つ押さえておきたいのは、比重が品物全体の重さと体積から求める値だという点です。そのため、比重だけでは「表面と内部で素材が違う」という内部構造までは特定できません。表面が金で内部が別の金属だったとしても、全体の値が18金に近くなれば、比重だけで構造の違いを見抜くのは難しくなります。
18金の比重そのものに配合による幅があることも、判断を難しくしています。
なお、今回の偽造品について、個々の品の比重やメッキの厚さは報じられていません。ここで説明しているのは、比重という確認方法の性質です。
「K18」の刻印があれば、本物の18金なの?
比重が決め手にならないなら、刻印はどうでしょうか。ここには、あまり知られていない制度上の区別があります。
日本には、造幣局による公的な品位証明の仕組みがあります。造幣局は、製造業者や販売業者からの依頼に応じて品位試験(分析を行い、製品に含まれる貴金属の純度の割合を調べること)を行い、合格した製品にだけ証明記号を打ちます。この記号が、通称「ホールマーク」です。
そのうえで、造幣局はこう明記しています。
「K18、Pt900などの記号は造幣局の証明記号ではありません」
(造幣局「貴金属製品の品位証明」)
つまり、一般的な「K18」の刻印は、造幣局が分析して品位を証明したことを示す記号ではありません。
もちろん、K18と刻印された製品の多くが問題のある品だ、という意味ではありません。今回のような偽造品を考えるときには、刻印だけで素材を確定することはできないという点が大切だ、ということです。
反対に、ホールマークがないことも問題を意味しません。造幣局の品位証明は任意の制度で、マークのない市販品もあります。
造幣局自身も、この仕組みが必要な理由をこう説明しています。
「貴金属の品位は目で見てわかるものではありません」
(造幣局「貴金属製品の品位証明」)
刻印や比重だけでは足りないとき、何を確認する?
刻印と比重に加えて、警視庁が挙げたもう一つの方法が成分検査です。品物に含まれる元素を調べる検査で、代表的なものが蛍光X線分析(X線を当てたときに品物から出てくる別のX線を測り、含まれる元素を調べる方法)です。
ただし、蛍光X線分析で分かるのは主に表面付近の成分です。金メッキが施されていると、表面の金だけを測ることになり、内部の素材までは判断できないことがあります。
※蛍光X線分析で調べられる深さは、装置や条件によって変わります。分析装置メーカーの解説例では、表面から約15µm(0.015mm)程度とされています。
だからこそ、組み合わせに意味があります。同メーカーは、成分検査で分かった表面の組成から見込まれる比重と、実際に測った比重が一致するかを確かめる使い方を紹介しています。表面の成分と全体の比重がかみ合わなければ、内部が表面と違う可能性を考える手がかりになります。警視庁が比重測定と成分検査の両方を挙げたのも、こうした考え方と読むことができます。
なお、内部の素材まで直接確認しようとすると、品物の一部を削るなど、品物を損なう検査が必要になる場合があります。店頭での確認は、品物を傷つけずにどこまで分かるかという範囲で、複数の方法を組み合わせるものです。
GIA G.G.資格保有者の視点で読み解くと
一つの検査で問題がなかったからといって、それだけで「本物」と決めることはできません。検査ごとに確認できる内容が違うため、複数の結果を見比べ、互いに矛盾がないかを確かめることが大切です。これは宝石の評価でも同じで、一つの特徴だけで決めず、複数の情報を組み合わせて判断します。
手元の金製品について、知っておきたいこと
ここまでは偽造品の話です。ただ、「一つの確認だけでは決められない」という考え方は、手元の金製品を確認するときにも参考になります。
「K18」の刻印は、何として作られたかを示す表示です。手に持った重さや、水を使って測った比重は、品物全体の重さと体積の関係を示す値です。どちらも意味のある材料ですが、それだけで本物と決めることも、少し軽く感じるだけで偽物と決めることも、根拠としては足りません。
ただし、今回のニュースと手元の品物では、条件が一つ違います。ニュースの偽造品は、だます目的で作られた品です。手元の金製品の多くはそうではありませんし、何より現物が手元にあります。現物があれば、重さも、表面の成分も、状態も、実際に確かめることができます。
宝石の確認でも、一つの特徴だけで判断せず、複数の情報を組み合わせるという考え方は共通しています。
今回のニュースから考える、金の比重と刻印への疑問
Q. 「K18」の刻印があれば、品位が証明された製品ということですか?
いいえ。造幣局は「K18、Pt900などの記号は造幣局の証明記号ではありません」としています。品位を公的に証明しているのは、造幣局が分析のうえ打つホールマークです。「K18」は、その製品がK18であることを示すために付けられた表示で、造幣局の品位証明とは別のものです。
Q. ホールマークがない金製品は、偽物ということですか?
そうとは限りません。造幣局の品位証明は任意の制度で、マークのない市販品もあります。マークがないのは、品位が公的に証明されていないという意味であり、金ではないという意味ではありません。
Q. 金に比重が近い金属は、ほかにもありますか?
あります。今回報じられたタンタル(約16.6)のほか、分析装置メーカーは、金のインゴットなどでタングステンを芯材に埋め込んだ偽造品も挙げ、表面の分析だけでは見分けにくい例として注意を促しています。
SHINKAについて
今回のニュースが示したのは、刻印も比重も、それぞれ確かめられることが決まっている、ということです。違う角度からの確認を重ねて、初めて判断に近づきます。
SHINKAは、宝石買取に特化した専門店です。宝石だけでなく、貴金属や作り、状態も含め、ジュエリー全体を確認します。査定では、原則としてお客様の目の前で、何を確認してその評価になったのかをご説明します。
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この記事は公開前にGIA G.G.資格保有者が確認しています。

