2026.10.14

予想最大1,800万ドル、ブルガリのピンクダイヤが競売へ|色の等級は価値をどう左右する?専門家が解説

濃いグレーの石の台の上に、同じ長方形のエメラルドカットの宝石が5つ横一列に並んでいる。左から右へ、ごく淡いピンクから鮮やかなピンクへ色が強くなっていく

ローマの宝飾ブランド、ブルガリが仕立てた24.00カラットのピンクダイヤの指輪が、2026年11月10日にスイス・ジュネーブで開かれるクリスティーズの競売に出品されます。予想価格は1,200万〜1,800万米ドル(約19億〜28億円)。欧州の名門一族のもとに70年以上あり、競売に出るのは今回が初めてです。

クリスティーズが、この石の色として示したのは「Fancy Intense Pink(ファンシー・インテンス・ピンク)」という等級です。この言葉は何を表し、なぜピンクダイヤの価値をここまで左右するのでしょうか。

参考記事
Christie’s「Christie’s Presents The Bulgari Pink」
Christie’s Press:https://press.christies.com/christies-presents-the-bulgari-pink/

70年以上、一族の手元にあったブルガリ・ピンク

クリスティーズによると、石の形はエメラルドカット(長方形のステップカット)です。一族の言い伝えでは、現在の所有者の曽祖父が1950年代にインドで原石を手に入れ、ブルガリに託して、今の指輪に仕立てたとされています。

クリスティーズはまた、この石を「Type IIa(タイプIIa)」のダイヤモンドとしています。ダイヤモンドを、含まれる不純物の種類で分けた分類の一つで、クリスティーズは宝石品質のダイヤモンドの2%に満たない種類だと説明しています。

競売は「Magnificent Jewels」と題したセールで、会場はジュネーブのフォーシーズンズ ホテル デ ベルグです。11月5日から10日まで下見の展示が行われます。

※円換算は、1米ドル=約158円(2026年10月9日時点)の目安です。

ピンクダイヤの価値は、まず「色」で決まる

ライトグレーの台の上に、同じ形・同じ大きさのエメラルドカットの宝石が2つ並んでいる。左は明るく鮮やかなピンク、右は茶みを帯びた暗く沈んだピンクに見える

無色のダイヤモンドとピンクのようなカラーダイヤモンドでは、色の評価の考え方が逆になります。

GIA(米国宝石学会)によると、無色のダイヤモンドはD〜Zの記号で評価され、色が少ないほど希少です。一方、カラーダイヤモンドは、色が「どれだけ無いか」ではなく「どのように有るか」で評価されます。

見る向きも違います。GIAの説明では、D〜Zの判定は石を伏せた状態で行い、カラーダイヤモンドは石を上から見た状態(フェイスアップ)で色を判定します。指輪に留めたときに見える向きと同じです。

そしてGIAは、カラーダイヤモンドでは色が最も大きな価値の要因で、わずかな色の差でも価値に大きく影響すると説明しています。内包物(石の内部の小さな結晶や割れ)が多く、透明度の評価が低い石でも、上から見た色が美しければ評価されることがあるとしています。

ピンクダイヤの値段を考えるとき、まず色の等級を見るのはこのためです。

「ファンシー・インテンス」は、濃さではなく明るさと鮮やかさの組み合わせ

GIAは、カラーダイヤモンドの色を次の3つで表します。

要素意味
色相(ヒュー)何色か。ピンク、ブルーなど
トーン色の明るさ・暗さ
彩度色の強さ・鮮やかさ

「Fancy Intense」のような言葉は、このうちトーンと彩度の両方をまとめた結果を表すものです。GIAは、色の強さが増す順に次の言葉を挙げています。

Faint → Very Light → Light → Fancy Light → Fancy → Fancy Intense → Fancy Vivid → Fancy Dark → Fancy Deep

GIAによると、このうちFancy IntenseとFancy Vividは、一般に高い価格になる等級です。

ここで大切なのは、等級が「濃いほど上」という一本の物差しではないことです。GIAは、色が多いほどよいのが一般的だとしたうえで、トーンも重要だと述べています。極端に暗いFancy Darkの石は、より明るいFancy Intenseの石より好まれないことがある、という説明です。

つまり、ピンクが濃く見えることと、評価が高いことは同じではありません。明るさを保ったまま色が鮮やかであることに、価値が置かれています。

大きさも色の見え方に関わります。GIAによると、大きな石ほど光が石の中を通る距離が長くなり、色が濃く見えることがあります。また、カラーダイヤモンドも大粒ほど希少です。クリスティーズも、24カラットという大きさとFancy Intense Pinkの組み合わせを、この石の希少さを表すものとして紹介しています。

等級の言葉だけでは分からないこと

ライトグレーの台の上に、同じ形・同じ大きさのエメラルドカットの宝石が3つ並んでいる。左は紫みのピンク、中央は純粋なピンク、右は茶みのピンクに見える

色の等級は評価の大きな手がかりですが、それだけでピンクダイヤの評価が決まるわけではありません。

一つは、色の名前に付く修飾語です。ピンクには、紫みやオレンジみ、茶み、灰みを帯びたものがあります。GIAは、純粋なピンクの方が、紫み・オレンジみ・茶み・灰みのあるピンクより好まれると説明しています。同じ等級の言葉が付いていても、色相の修飾語によって市場での好まれ方が変わります。

もう一つは、その色が天然のものかどうかです。GIAによると、高温高圧処理(HPHT)は処理されたピンクのダイヤモンドとも関係があり、照射やコーティングでも色を変えることができます。そして、ほかの条件が同じなら、未処理のダイヤモンドの方が処理されたものより高価です。

GIAのレポートには、色の等級とは別に、検出された処理も記載されます。天然か合成か、処理されているかを見分けるには、高度な科学機器による検査が必要な場合もあります。

GIA G.G.資格保有者の視点で読み解くと

色の等級は、その石の色の「見え方」を一語にまとめた記述であって、値段の答えではありません。同じ言葉が付いていても、色相の修飾語や、色の成り立ちが違えば、市場での評価は別のものになります。等級の言葉を結論として読まず、評価の入口として読む。カラーダイヤの価値は、そこから一つずつ確かめていくものです。

手元のピンクの石も、同じ考え方で見る

白い折り目のある紙のトレーの中に、淡いピンクのエメラルドカットの宝石が一つ、上を向けて置かれている。上から白く均一な光が当たっている

ピンクの石の指輪や、鑑別書に「Fancy Light Pink」などと書かれた石をお持ちの方もいるでしょう。そのときも、同じ考え方が当てはまります。

ただし、ブルガリ・ピンクと手元の石では条件が違います。ブルガリ・ピンクは等級が発表されていますが、多くの人はその石を写真でしか見ることができません。一方、手元の石は実物を手に取れますが、等級は分かっていないことが多いはずです。

GIAは、色の等級の差はとても微妙で、決められた照明・背景・見方で判定するものだと説明しています。部屋の明かりの下で「濃い」「薄い」と感じた色は、等級そのものではありません。

鑑別書がある場合は、色の記載を「等級の言葉」「色の修飾語」「処理についての記載」に分けて読むと、その石の色がどう評価されているかが見えやすくなります。鑑別書がない場合は、そもそもダイヤモンドかどうか、天然か合成かも、見た目だけでは決められません。

ピンクダイヤの色について、よくある疑問

Q. Fancy Vividは、Fancy Intenseより上の等級ですか?

GIAが示す順序では、Fancy VividはFancy Intenseの次に置かれ、どちらも一般に高い価格になる等級とされています。ただし、等級の言葉は明るさと鮮やかさの組み合わせを表すもので、一列の順位だけで評価が決まるわけではありません。色相の修飾語や、色が天然かどうかも合わせて評価されます。

Q. 鑑別書のないピンクの石でも、査定できますか?

SHINKAでは、鑑別書・鑑定書がない品物や、天然・合成・模造のどれか分からない品物でも、査定・ご相談いただけます。色の等級や処理の有無を店頭で断定することはしません。高額で、鑑別の結果が査定額に大きく影響する場合には、必要に応じて鑑別機関へ依頼することがあります。

SHINKAについて

SHINKAの店内

SHINKAは、宝石買取に特化した専門店です。査定では、どこまでを店頭で確認でき、どこからが鑑別機関の領域かを分けてご説明します。

原則としてお客様の目の前で査定し、色の見え方や状態を含めて、どこを見てその評価になったのかをお伝えします。

お手元のピンクの石の色が、評価にどう表れるのか。まずは価値をご確認ください。

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この記事は公開前にGIA G.G.資格保有者が確認しています。

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