「9月の誕生石はサファイアだと思っていたのに、クンツァイトと書いてあるページがある」「どちらが正しいのか」。9月生まれの方への贈り物を考えるときや、手元の石を見直すときに、こうした迷いが生じることがあります。
検索結果には誕生石の一覧や石言葉の紹介が並びますが、検索上位のページには、誰が、いつ、なぜ誕生石を変えたのかを一次資料で示したものが見当たりませんでした。
先に結論をお伝えします。
9月の誕生石は、サファイアとクンツァイトの2つです。どちらも正しい誕生石です。 2021年12月、全国宝石卸商協同組合が63年ぶりに誕生石を改訂し、日本ジュエリー協会(JJA)もこれを追認しました。クンツァイトはこのとき「日本オリジナル」として加えられた石で、名前の由来であるクンツ博士の誕生月が9月だったことが理由とされています。
この記事では、改訂の経緯と理由、クンツァイトという宝石の性質、サファイアとの違い、そして石言葉がどこまで確かな話なのかを、改訂した団体の発表文と宝石学の資料にもとづいて整理します。
9月の誕生石は、サファイアとクンツァイトの2つです

日本ジュエリー協会(JJA)の誕生石のページでは、9月の誕生石としてサファイアとクンツァイトの2つが挙げられています。
ここで大切なのは、どちらか一方が正しく、もう一方が間違いというわけではないという点です。1つの月に複数の誕生石があるのは9月だけではありません。改訂後の一覧では、3月は4つ、12月も4つの石が並んでいます。
| 月 | 改訂後の誕生石(JJAの一覧より) |
|---|---|
| 9月 | サファイア/クンツァイト |
| 3月 | アクアマリン/サンゴ/ブラッドストーン/アイオライト |
| 12月 | トルコ石/ラピスラズリ/タンザナイト/ジルコン |
サファイアを贈っても、クンツァイトを贈っても、9月の誕生石を贈ったことになります。
2021年12月の改訂で何が変わったのか

誕生石を改訂したのは、全国宝石卸商協同組合です。同組合の発表文(2021年12月20日付)によると、改訂の要点は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 改訂した団体 | 全国宝石卸商協同組合 |
| 時期 | 2021年12月(63年ぶりの改訂) |
| 追加された石 | 10石 |
| 賛同 | 日本ジュエリー協会(JJA)、山梨県水晶宝飾協同組合 |
同組合は、1958年に日本で初めて誕生石を定めたと説明しています。そのときは、アメリカの宝石商組合(現在のジュエラーズ・オブ・アメリカ)が定めた誕生石をもとに、日本独自にサンゴとヒスイを加えたとしています。
では、なぜ63年ぶりに変えたのか。発表文では、理由として次の2点が挙げられています。
- 国内でさまざまな誕生石のリストが混在し、消費者が混乱するため、業界として誕生石を統一することを第一に考えた
- 新型コロナウイルスの影響で業界が大きな痛手を受けるなか、選択の幅を広げ、宝石への関心を高めてもらいたい
つまり、この改訂は「誕生石がばらばらで、どれが正しいのか判断できない」という状態を整理するためのものでした。いま9月の誕生石に迷う方がいるのは、改訂以前の情報と改訂後の情報が、ネット上にまだ混在しているためと考えられます。
なぜクンツァイトが9月に選ばれたのか

追加された10石は、性格によって3つに分かれます。
- アメリカのジュエラーズ・オブ・アメリカが追加していた石:アレキサンドライト、スピネル、タンザナイト、ジルコン
- 日本オリジナルとして加えた石:クリソベリル・キャッツ・アイ、アイオライト、モルガナイト、スフェーン、クンツァイト
- 歴史的背景を考慮して加えた石:ブラッドストーン
クンツァイトは、日本オリジナルの5石のひとつです。
全国宝石卸商協同組合の発表文には、クンツァイトを9月とした理由が書かれています。クンツァイトという名前は、鉱物学者ジョージ・フレデリック・クンツにちなんだもので、その誕生月が9月であることにちなんで、9月の誕生石としたと説明されています。
同組合は、新しく追加した石について「その発見者や名称に因んだ人々の誕生月に重きを置いた」としています。同じ発表文では、4月のモルガナイトは名前の由来であるモルガン、7月のスフェーンは新種の鉱物として初めて認識したピクテ、3月のアイオライトは鉱物名の由来であるコルディエの誕生月を参考にしたと説明されています。
クンツァイトはどんな宝石か

クンツァイトは、スポジュメンという鉱物のうち、ピンクから紫色を示すものの名前です。色のもとになっているのはマンガンです。
この宝石の特徴は、見る方向によって色の濃さが変わる多色性です。全国宝石卸商協同組合の発表文でも、色の濃いものでは方向によって紫色・ピンク色・無色の3色が見られると説明されています。そのためカットする職人は、色がいちばん濃く見える向きを考えて石を切り出します。
日本ジュエリー協会は、クンツァイトを優しい色合いと手頃な価格の宝石として紹介しています。宝石としては、ライラックピンクのものが最もよく知られています。
サファイアとクンツァイトの違い|硬度・劈開・色の安定性

同じ9月の誕生石でも、2つの宝石は性質が大きく異なります。贈る相手や使い方を考えるときに、ここが判断の材料になります。
| 項目 | サファイア | クンツァイト |
|---|---|---|
| 鉱物 | コランダム(ルビーと同じ鉱物) | スポジュメン |
| 色 | 青が代表的。ピンク・黄などもある | 淡いピンク〜すみれ色 |
| モース硬度 | 9 | おおむね6.5〜7(資料により6〜7、7) |
| 劈開(特定の方向に割れやすい性質) | ない | 2方向に完全な劈開がある |
| 色の安定性 | (特記事項なし) | 熱や強い光に長時間さらされると退色することがある |
サファイアは、ルビーと同じコランダムという鉱物で、赤いものだけをルビー、それ以外の色をサファイアと呼びます。GIA(米国宝石学会)の資料では、硬度9で劈開がなく、耐久性の高い宝石とされています。
クンツァイトは硬度こそ水晶とほぼ同じですが、2方向に割れやすい性質(劈開)があり、強い衝撃で割れることがあります。また、熱や強い光に長時間さらされると、色が薄くなることがあります。
整理すると、次のように考えられます。
- 毎日身に着ける指輪で、傷や割れの心配をなるべく減らしたい → サファイアが向いています
- やわらかなピンクを楽しみたい。ペンダントなど、ぶつけにくい形で → クンツァイトが向いています(GIAも、摩耗にさらされにくいペンダントや、石を守る留め方が好まれるとしています)
どちらが上ということではなく、性質の違いを知ったうえで選ぶことが大切です。
「石言葉」はどこまで確かな話なのか

クンツァイトを調べると、さまざまな「石言葉」が紹介されています。検索でも「クンツァイト 石言葉」は月に880件ほど(2026年9月時点の目安)調べられています。
ここで確認しておきたいのは、石言葉の根拠です。
- 日本ジュエリー協会の誕生石のページには、石言葉の記載がありません
- 誕生石を改訂した全国宝石卸商協同組合の発表文にも、石言葉は書かれていません
私たちが確認した範囲では、石言葉を公的に定めた団体や資料は見つかっていません。ページによって紹介される言葉が違うのは、このためと考えられます。
もちろん、石言葉を贈り物のメッセージとして楽しむことは自由です。ただし、「この石にはこういう意味が決まっている」という公式の定めではないことは、知っておくとよいでしょう。誕生石そのものは団体が定めて公表していますが、石言葉については、そうした定めが確認できない、という違いです。
贈る前・身に着ける前に知っておきたいこと

クンツァイトを贈る、あるいは身に着けるときは、次の3点を伝えておくと安心です。
- 身に着けないときは、光の入りにくい閉じた箱へしまう(GIAは閉じたジュエリーボックスやケースでの保管を勧めています)
- 強くぶつけないようにする。家事やスポーツのときは外しておく
- 洗うときは温かい石けん水で。超音波洗浄機やスチームは使わない
退色の条件や、硬度があっても割れる理由については、こちらで詳しく整理しています。
▶ クンツァイトは退色するのか|一次資料で確かめられることと、割れやすさ
まとめ|どちらを選んでも、9月の誕生石です
- 9月の誕生石は、サファイアとクンツァイトの2つ。どちらも正しい誕生石です
- 2021年12月、全国宝石卸商協同組合が63年ぶりに改訂し、日本ジュエリー協会も追認しました
- 改訂の第一の理由は、国内で混在していた誕生石のリストを統一するためです
- クンツァイトは日本オリジナルの追加で、全国宝石卸商協同組合はクンツ博士の誕生月が9月であることを理由に挙げています
- サファイアは硬度9・劈開なし、クンツァイトはおおむね6.5〜7・2方向の劈開・退色しうる。使い方に合わせて選べます
- 石言葉に公的な定めは確認できません。楽しみ方は自由ですが、公式の定めとして扱うものではありません
サファイアかクンツァイトか、色や状態も含めて、お手元の宝石がどのように見られるのかを確認したい方は、一度ご相談ください。
査定の対象や流れ、色が薄い石・鑑別書のない品の扱いは、こちらでまとめています。
▶ クンツァイトの買取|査定で確認する要素と、色が薄い石・鑑別書なしの品の扱い
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