タイ商務省が、ジュエリーの制作を競うテレビ番組「The Secret Gems」を放送しています。2026年9月20日に始まった全8回の番組で、タイの宝石・ジュエリーブランド8社が、若手のデザイナーや大学生、職人のチームと組んで課題に挑んでいます。
課題の中には、原石の選び方、カット、研磨、石留めといった、宝石そのものを扱う技能を試すものもあるといいます。デザインだけでなく、石をどう選び、どう削るかが競われているのです。
宝石の色は、石そのものが持っている性質だと思われがちです。では、同じ種類の宝石でも、原石の選び方や削り方によって、見え方は変わるのでしょうか。
参考記事
National Jeweler「Jewelry Design Competition Show Airs in Thailand」(2026年10月19日)
National Jeweler:https://nationaljeweler.com/articles/15426-jewelry-design-competition-show-airs-in-thailand
タイの番組「The Secret Gems」で競われていること
米国の宝飾業界誌National Jewelerによると、番組はタイ商務省の国際貿易振興局(DITP)の支援を受けています。DITPは、年2回開かれるバンコク宝石・ジュエリーフェアの主催者の一つで、番組の狙いを、タイの宝石・ジュエリー産業の競争力を高め、タイの製品やブランドの価値を高めることだと説明しています。
課題には、特定の層に向けたジュエリーのデザインや販売戦略づくりのほか、原石の選び方、カット、研磨、石留めの技能を試すものがあります。
審査員の一人は、バンコクにあるカラーストーン(ダイヤモンド以外の色のついた宝石)の鑑別機関Lotus Gemologyの共同創業者、ビリー・ヒューズ氏です。同誌によると、ヒューズ氏は作品を、作りの質、創造性、課題への応え方、ストーリー性といった観点で評価していると話しています。また、宝飾品をつくる技能には長年の修練が必要で、本当の価値があることを、多くの人に知ってほしいとも述べています。
タイでは宝石・ジュエリー産業が主要な輸出産業の一つで、商務大臣の顧問によると、2026年1〜6月の輸出額は83億ドルを超えたとされています。
宝石の色の見え方は、カットで変わる
カラーストーンを正面から見たとき、石の面全体が同じ色に見えるわけではありません。Lotus Gemologyの解説によると、カットした石を正面から見ると、見え方の異なる3つの部分が現れます。
- ブリリアンス:石の中で光が反射して目に戻ってくる部分。光が石の中を長く通るため、色が最も濃く、鮮やかに見える
- ウィンドウ(窓):石の底側が浅すぎるために、光が石の中を短い距離しか通らない部分。色が薄く、ぼんやりと見える
- エクスティンクション:石の底側が深すぎるために、光が側面から逃げてしまう部分。暗く、黒っぽく見える
同解説は、この3つは主に、石の底側の面(パビリオン)をどの角度で削ったかによって生まれるとしています。同じ材料の石でも、削り方によって、鮮やかに見える部分が広くも狭くもなるということです。
Lotus Gemologyは、正面から見て鮮やかな色が見える範囲の広さを「カラーカバレッジ」と呼び、これを大きくするには適切なカットが欠かせないとしています。宝石の色は、材料そのものの色だけでなく、カットを通してどう見えるかとして受け取られているのです。
ただし、暗く見える部分をまったくなくすことはできません。同解説は、どれほどうまくカットした石でも、エクスティンクションはある程度現れると説明しています。
なぜ原石の選び方が仕上がりを左右するのか
では、なぜカットの技能だけでなく、原石の選び方まで問われるのでしょうか。
Lotus Gemologyの別の解説は、ルビーやサファイアを例に、石のプロポーション(各部の比率)は多くの場合、原石の形によって決まってしまうと説明しています。スリランカ産の原石は細長い紡錘形の結晶が多く、重さを残すために底側が深すぎるカットになりやすい一方、タイ・カンボジア産のルビーは薄い板状の結晶が多く、浅すぎるカットになりがちだといいます。カットした石にオーバルの形が多いのも、原石から重さを残しやすいためだとしています。
原石から重さを多く残そうとすると、プロポーションが理想から外れ、ウィンドウやエクスティンクションが出やすくなることがあります。カットする側は、重さと見え方のどちらをどこまで取るかを判断しながら削っています。
また、Lotus Gemologyが引用する業界の格付けマニュアルには、原石をどの向きで削るかによっても、暗く見える部分が増えたり減ったりするという記述があります。原石の形や向きを見極めることは、仕上がりの見え方を左右する大切な判断の一つです。
手元の色石は、正面から見た色の広がりも見え方に関わる
番組の参加者は原石から作品をつくりますが、手元のジュエリーの石は、すでにカットされて仕上がっています。見え方はカットの時点でほぼ決まっており、その結果を実物で確かめられる点が、番組とは違います。
手元のカラーストーンを見るときは、色の名前や重さだけでなく、正面から見たときの次の点も見え方に関わります。
- 中央の色が抜けて、下が透けたように見えないか(ウィンドウ)
- 縁のあたりが暗く、黒っぽく沈んでいないか(エクスティンクション)
- 鮮やかな色が、石の面の広い範囲に見えているか
ただし、こうした見え方は、光の種類や見る角度、背景の色によっても変わります。Lotus Gemologyも、色石の評価は、光源や見る角度、背景をそろえて行うべきだと説明しています。暗い部屋や特定の照明の下で一度見ただけで、石の良し悪しを決めることはできません。
また、カットだけで宝石の評価が決まるわけでもありません。色そのもの、透明度、内包物、処理の有無などと合わせて判断されます。
よくある質問
Q. 宝石をカットするのはなぜですか?
宝石が本来持っている美しさを、できるだけ引き出すためです。面の角度を整えることで、石に入った光を目の方向へ返し、色や輝きを見せます。Lotus Gemologyは、カットの役割を「宝石の持つ美しさを最大限に見せること」と説明しています。
SHINKAについて
SHINKAは、宝石買取に特化した専門店です。カラーストーンの査定では、色の名前や重さだけでなく、宝石そのものの見え方、貴金属、作り、状態まで含めて、ジュエリー全体を確認します。原則としてお客様の目の前で査定し、評価の根拠をご説明します。
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この記事は公開前にGIA G.G.資格保有者が確認しています。

