同じ100万円で買ったアレキサンドライトの指輪2点。鑑定の結果、天然だったのは小さな石が複数並ぶ方で、もう一方は工場で作られた合成石でした。しかもその合成石は、番組の鑑定士から「天然であれば2000万円の評価ができる」と言われるほどの石でした。
「天然であれば2000万円」と評された石が、なぜ合成だったのか。色変わりの美しさは天然の証明になるのか。合成石の性質と、アレキサンドライトが評価される順番から、GIA G.G.資格保有者の視点で解説します。
参考記事
テレビ東京「開運!なんでも鑑定団」開運データベース「アレキサンドライトの指輪 2点」
テレビ東京:https://www.tv-tokyo.co.jp/kantei/kaiun_db/otakara/20260616/02.html
「なんでも鑑定団」で、評価が分かれた2点の指輪
番組公式サイトによると、依頼人は40年ほど前、洋品店で勧められたアレキサンドライトの指輪を100万円で購入し、その後、別の店でもう1点を同じく100万円で購入しました。本人評価額は200万円、鑑定額は2点合わせて180万円でした。この回は2026年6月16日に放送され、10月4日に再放送されました。
番組の鑑定士の総評は、次のような内容でした。
- 複数の石がセットされた方が天然石。個々の石は小さいが、色の変わり方が見事で透明度も高い
- もう一方は工場で作られた合成石。不純物が少ないため、紫外線を当てると赤く光る
- この合成石が天然のアレキサンドライトであれば、2000万円の評価ができる
1点ごとの評価額の内訳は公表されていません。
アレキサンドライトの価値は、色の変わり方で決まる
アレキサンドライトは、クリソベリルという鉱物の変種です。GIA(米国の宝石学研究・教育機関)によると、日光や蛍光灯の下では緑に、白熱灯の下では褐色〜紫がかった赤に見えます。光源によって色が入れ替わるこの性質が、この宝石の最大の特徴です。
GIAは、品質の高いアレキサンドライトの条件として、次のような点を挙げています。
- 色の変わり方がはっきりしていて、色そのものが鮮やかであること
- 内包物が少なく、透明度が高いこと
- 大きさがあること(多くは1カラット未満で、大きく品質の高い石ほど価格が大きく上がる)
良質なものは極めて希少とされています。番組の鑑定士が「天然であれば2000万円」と述べたことは、この合成石が、天然であれば高く評価される品質の石だったことを示しています。
天然なら2000万円の石が、なぜ合成なのか
ここで押さえておきたいのは、合成石は「別の素材でできた偽物」ではないという点です。GIAは合成石を、天然と本質的に同じ化学的・物理的・光学的性質を持ち、研究所で育てられたものと説明しています。合成アレキサンドライトも、アレキサンドライトと同じ物質です。だから、光源によって色が変わるという性質も同じように現れます。
番組の鑑定士も、この合成石について「不純物が少ない」と説明しています。色がよく変わり、透明度の高い石であることと、その石が天然であることは、別のことなのです。
つまり、「色の変わり方が見事」「透明度が高い」という特徴は、天然の証明にはなりません。合成石も、同じ特徴を持ちうるからです。
色がはっきり変わる合成アレキサンドライトは、1970年代にはすでに製造されていました。40年ほど前に買った指輪でも、合成である可能性はあったことになります。
同じ見た目でも、評価の土台が違う
天然と合成で評価がどれほど違うかは、番組の総評がよく表しています。同じ石について「天然であれば2000万円」と言われながら、実際の鑑定額は2点合わせて180万円でした。
GIAの研究誌は、合成のカラーストーンは天然と同じカラット単価にはならないと述べています。評価は、まず「天然か合成か」で土台が決まり、そのうえで色・透明度・大きさといった品質が見られます。品質が同じように見えても、土台が違えば評価の基準そのものが変わります。
番組では、合成石は紫外線を当てると赤く光ると紹介されました。光への反応は、確認の手がかりの一つです。ただ、一つの反応だけで天然か合成かを決めることはできません。色の変わり方、透明度、光への反応、内部の特徴などを組み合わせて見て、それでも決めきれないものは鑑別機関の検査で確かめることになります。
GIA G.G.資格保有者の視点で読み解くと
「きれいだから天然だろう」という見方は、天然か合成かの判断には使えません。見た目の良さは品質の評価には意味がありますが、天然かどうかは別の手がかりで確かめる必要があります。品質の評価と、天然かどうかの確認は、別々に行うものです。
手元の色が変わる宝石について、知っておきたいこと
色の変わる石の指輪をお持ちなら、部屋の明かりで色が変わるのを見て「本物のアレキサンドライトだ」と感じることがあるかもしれません。ただ、ここまで見てきたとおり、色が変わることは天然であることの証明ではありません。
一方で、今回のニュースと手元の石では条件が違います。番組の2点は、専門家が現物を確認したうえで結果が出ています。手元の石は、まだ確認されていないだけで、天然の可能性も合成の可能性もあります。鑑別書が残っていれば、それが大きな手がかりになりますし、なくても実物を確かめることができます。
アレキサンドライトの合成について、よくある疑問
Q. 合成アレキサンドライトは、天然と何が違うのですか?
物質としての性質は本質的に同じで、違いは研究所で育てられたかどうかです。評価のうえでは、天然と同じカラット単価にはならないとされています。
Q. 合成石だと、価値は0円ですか?
合成石だからといって、それだけで価値がないと決まるわけではありません。評価は、合成石の大きさや品質に加え、枠に使われている貴金属や指輪の作りによっても変わります。
Q. 色の変わり方で、天然か合成か見分けられますか?
色の変わり方だけでは見分けられません。合成石も色が変わります。色変わりがはっきりしていることは、天然の証明にはなりません。
Q. 鑑別書があれば、天然か合成か分かりますか?
鑑別書には、鑑別機関が調べた石の種類や、天然か合成かの結果が記載されます。手元に残っていれば、まず確認したい書類です。
SHINKAについて
今回のニュースが示したのは、見た目の美しさと、天然かどうかは別の問いだということです。
SHINKAは、宝石買取に特化した専門店です。宝石だけでなく、貴金属や作り、状態、鑑別書の内容も含め、ジュエリー全体を確認します。査定では、原則としてお客様の目の前で、何を確認してその評価になったのかをご説明します。
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この記事は公開前にGIA G.G.資格保有者が確認しています。

