2026.09.04

スフェーンとペリドットの違い|分散と複屈折で見分ける2つの軸

よく似た黄緑色のルースが2粒並んでいる

スフェーンとペリドットは、どちらも黄緑から緑の色域に入る宝石です。ルースの状態で並べると、色だけでは見分けがつかないことがあります。

見分けの手がかりとしてよく挙げられるのが「輝きが強いほうがスフェーン」という説明ですが、何がどう強いのかまで踏み込んだ説明は多くありません。また「二重像(ダブリング)が見えればスフェーン」と読める説明もありますが、これは正確ではありません。

この2つの石を分けているのは、光の分け方です。宝石が光をどう扱うかには分散複屈折という別々の性質があり、スフェーンとペリドットはこの2つの現れ方が違います。

分散(虹色の強さ)は、スフェーンが 0.051、ペリドットが 0.0202.5倍以上の差があります。一方で複屈折(二重像)は、どちらの石にも強く出ます。したがって二重像の有無では分けられません。

二重像が見える + 虹色が強い → スフェーン

二重像が見える + 虹色が弱い → ペリドット

ただし、見た目だけで石種を断定することはできません。

スフェーンとペリドットは、光の分け方が違う

スフェーンは虹色の閃光が出て、ペリドットは出ないことを示した写真

まず、2つの石が何なのかを整理します。

スフェーンペリドット
鉱物名チタナイト(CaTiSiO₅)オリビン(かんらん石)の宝石変種
結晶系単斜晶系斜方晶系
色の要因鉄・希土類元素。緑は鉄の高含有、クロムスフェーンはCr³⁺
色の幅黄・黄緑・緑・オレンジ・褐色褐緑〜黄緑〜緑

別の鉱物です。似ているのは色域が重なるためであって、成り立ちは違います。

そして、宝石が光をどう扱うかには、分散複屈折という2つの別々の性質があります。

性質何が起きるか
分散(dispersion)白い光が虹色に分かれる。石の中で色の閃光が見える
複屈折(birefringence)石に入った光が2つに分かれて進む。奥のファセットの稜線が二重に見える

この2つは別の現象です。片方が強くても、もう片方が強いとは限りません。スフェーンとペリドットの違いは、まさにここに現れます。

分散|虹色の強さが2.5倍違う

スフェーンは虹色の閃光が強く出て、ペリドットは出ないことを比べた写真

分散度は、白い光がどれだけ大きく虹色に分かれるかを表す数値です。

宝石分散度
スフェーン0.051
ダイヤモンド0.044
ペリドット0.020

スフェーンの0.051は、ダイヤモンドの0.044を上回ります。GIAもスフェーンを「高い分散度に由来する驚異的なファイアで知られる」と説明しています。

対してペリドットの0.020は、スフェーンの半分以下です。ペリドットにも分散はありますが、虹色の閃光として認識できるほどには出ません。

実際にどう見えるか

光の下で石を傾けたとき、次のように現れ方が変わります。

見え方
スフェーンボディカラーの緑や黄緑とは別に、赤・橙・黄・緑の色の閃光がちらちらと動く
ペリドットボディカラーの緑が明るく澄んで見える。色が分かれて飛ぶ感じにはならない

これが最も判別しやすい軸です。

分散度が高いことは、価値が高いことを意味しません。分散は光学的性質の1項目であり、市場での評価は色・透明度・カット・大きさ・状態など複数の要素で決まります。

複屈折|ダブリングは、どちらにも出る

石を通して線を見ると、スフェーンは大きく、ペリドットは小さく二重にずれる図

ここが、多くの説明で誤解されている点です。

複屈折とは、石に入った光が2つに分かれて別々の速さで進む性質です。複屈折が強い石では、テーブル面から覗いたときに奥のファセットの稜線が二重にずれて見えます。これがダブリングです。

宝石複屈折ダブリング
スフェーン0.100〜0.192非常に強い。肉眼でも見えることがある
ペリドット0.033〜0.052強い。ダブリングやにじみが見え、鑑別の手がかりになる

ペリドットもダブリングが見える石です。IGSはペリドットについて「非常に強い複屈折を示し、ダブリングやにじみの効果を生み、これが鑑別の役に立つ」と説明しています。

つまり、「二重像が見えたからスフェーン」という判断は成り立ちません。

ただし、強さは大きく違う

数値を見ると、スフェーンの複屈折はペリドットの2〜4倍です。

  • スフェーン:ずれが大きく、線が明らかに2本に分離して見える
  • ペリドット:ずれが小さく、輪郭がにじむ・厚みが二重に見えるという程度にとどまることが多い

慣れれば「ずれの大きさ」で見当をつけられますが、石の大きさ・カット・見る方向によって見え方が変わります。単独の判断材料にはなりません。

なお、スフェーンは屈折率が高く、標準的な屈折計の測定範囲を超えます。これは鑑別上の特徴の一つです。

2つの軸を組み合わせると、石が分かれる

二重像と虹色の2軸で宝石が4つに分かれることを示した図

分散と複屈折は別の性質なので、組み合わせると判別の解像度が上がります。

二重像(複屈折)虹色(分散)該当する石
見える強いスフェーン
見える弱いペリドット
見えない強いスファレライト/グリーンガーネット/CZ など
見えない弱いそのほかの等軸晶系の石・ガラス など

スフェーンとペリドットの判別は、①と②の区別に絞られます。そして①と②を分けるのは、二重像ではなく虹色の強さです。

③が意味するのは、二重像が見えない時点でスフェーンでもペリドットでもないということです。次の章で説明します。

スファレライト・ガーネット・CZは、そもそもダブリングが出ない

スファレライト・ガーネット・CZは石を通しても線が1本のままであることを示した写真

スフェーンと間違えられやすい石は、ペリドット以外にもあります。ここで効いてくるのが結晶系です。

等軸晶系(立方晶系)の石は光学的に等方性で、複屈折を持ちません。つまりダブリングが原理的に出ません。

宝石結晶系複屈折ダブリング
スファレライト等軸晶系(等方性)なし出ない
アンドラダイト(デマントイドの母鉱物)等軸晶系(等方性)なし出ない
CZ(キュービックジルコニア)等方性なし出ない

スファレライト

分散が非常に強い石で、虹色の閃光という点ではスフェーンとよく似ます。ただし複屈折がないためダブリングが出ません。またモース硬度3.5〜4と、スフェーン(5〜5.5)よりさらに柔らかい石です。

グリーンガーネット

ガーネットは単一の鉱物ではなく近縁の鉱物種のグループで、硬度も6.5〜7.5と幅があります。緑の変種であるデマントイドの母鉱物アンドラダイトは等軸晶系・等方性で、ダブリングは出ません。

CZ(キュービックジルコニア)

着色したCZがスフェーンの模造品になりうることが知られています。CZには複屈折がなく、紫外線で蛍光を示します。この2点が手がかりになります。

数値で見た5石の違い

スフェーンとペリドットの比重を比べた図
宝石分散度複屈折モース硬度比重屈折率
スフェーン0.0510.100〜0.1925〜5.53.52〜3.541.843〜2.110
ペリドット0.0200.033〜0.0526.5〜73.3〜3.4(緑系)1.635〜1.879
スファレライト非常に強いなし3.5〜43.95〜4.102.368〜2.371
アンドラダイトなし6.5〜73.7〜4.11.87〜1.89
ダイヤモンド(参考)0.044なし10

比重にも差があります。スフェーンの3.52〜3.54に対し、緑系のペリドットは3.3〜3.4です。当店では比重測定を確認材料の一つとして使用することがありますが、これ単独で石種を断定するものではありません。

CZが疑われる場合は、UV・特殊光源での蛍光の有無も確認材料になります。こちらも同様に、単独の判断材料にはしません。

見た目で断定できないのは、どういうときか

石が小さい・枠にある・色が濃いという判断しきれない3つの状況

ここまで判別軸を説明しましたが、外観から石種を断定することはできません。当店でも、店頭の観察で判断できるのは傾向までで、断定はしていません。

状況なぜ難しいか
石が小さいダブリングも分散も、面積が小さいほど確認しづらい
カットが浅い/深い光の入り方が変わり、ファイアの出方が変わる
内包物が多い光が散乱し、色の閃光が読み取りにくい
枠にセットされている覗ける方向が限られ、比重も測れない
色が濃い・暗いボディカラーが強く、分散による色が埋もれる

スフェーンの扱いについては、スフェーンの弱点とは?硬度・靭性・安定性から見る割れやすさと扱い方で詳しく説明しています。

ご自身で試さないでいただきたいこと

判別のために、硬さを試す・薬品につける・熱を加えるといった方法を紹介している情報がありますが、これらは行わないでください。

スフェーンは硬度5〜5.5で、明瞭な劈開があり、靭性も脆い石です。傷や欠けが生じると元に戻りません。判別のための行為で、石そのものの評価を下げてしまいます。

石種が特定できない状態で、査定はどうなるのか

石種が特定できない場合に査定で行う4つの手順

結論からお伝えすると、石種が特定できないままお持ちいただけます。

当店では、天然・合成・模造か種類が不明なお品物でも査定・ご相談をお受けしています。ご自身で石種を特定してから来ていただく必要はありません。

段階行うこと
1色・透明度・内包物・カット・光の出方を確認する
2必要に応じて、比重測定やUV・特殊光源を確認材料として使う
3鑑別書をお持ちの場合は、記載された石種を重要な確認根拠として扱う
4そのうえで、傾向として判断できる範囲をご説明する

当店は鑑別機関ではありません。科学的に石種を証明するのは鑑別機関の領域です。当店が行うのは買取査定として必要な範囲の確認であり、断定はしません。

なお、すべてのお品物を鑑別機関へお出しするわけではありません。鑑別結果が査定額に大きく影響すると考えられる場合には当店から依頼することがありますが、影響が限定的と判断される品質・価格帯では、既存の鑑別書があればそれを参考にして査定します。

この判断の線引きも含めて、その場でご説明します。

評価要素ごとの詳細は、スフェーンの価値は何で決まるか|査定で見る評価要素と価格差の理由で解説しています。

まとめ

スフェーンペリドット
虹色(分散)0.051・強い0.020・弱い
二重像(複屈折)0.100〜0.192・非常に強い0.033〜0.052・強い
硬度5〜5.56.5〜7
比重3.52〜3.543.3〜3.4
  • 二重像はどちらにも出るため、有無では分けられません
  • 分けているのは虹色の強さです
  • 二重像が出ない場合は、スファレライト・ガーネット・CZなど等軸晶系の石の可能性があります
  • そして、見た目だけで石種を断定することはできません

お手元の石が何なのか、確認してみませんか。

SHINKAでは、石種が特定できない状態のお品物も査定・ご相談をお受けしています。査定は原則としてお客様の目の前で行い、何を見て、どこまで判断できて、どこからが鑑別機関の領域なのかをその場でご説明します。

  • 査定料・キャンセル料は無料です
  • 店頭・宅配・出張・LINE査定からお選びいただけます
  • 売却を決めていない状態でのご相談も承っています

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この記事は公開前にGIA G.G.資格保有者が確認しています。

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