シトリンの産地|天然の産出国と「ブラジル産」の意味、産地が評価にどう関わるのか

シトリンの産地を調べると、多くのページが「主な産地はブラジル」と説明しています。

ただ、この説明には整理が必要です。GIAが天然シトリンの主要な産地として挙げているのは、ボリビア・スペイン・マダガスカル・メキシコ・ウルグアイであり、ブラジルはそこに含まれていません。

では、なぜブラジルの名前がこれほど出てくるのか。そして、産地の情報は宝石の評価にどう関わるのか。

この記事では、天然シトリンの産地加熱前のアメシストの産地「マデイラ」のような販売上の色名という3つを分けて整理したうえで、産地が査定でどう扱われるのかまでをお伝えします。

天然シトリンの産地と、「ブラジル産」と呼ばれるものは別の話です

天然のシトリンと加熱前のアメシストを並べた図。同じ産地という言葉が2つのものを指すことを示す

まず、事実を分けて確認します。

何を指すか主な地域
天然シトリンの産地地中でシトリンとして生成したものボリビア・スペイン・マダガスカル・メキシコ・ウルグアイ
「ブラジル産」と呼ばれるもの加熱前のアメシストの産地ブラジル

GIAは、天然シトリンの主要な産地として、ボリビア・スペイン・マダガスカル・メキシコ・ウルグアイを挙げています。

一方でGIAは、シトリンの色へ加熱されるアメシストは主にブラジルで採掘されるとも説明しています。

つまり、市場で「ブラジル産シトリン」として扱われているものの多くは、ブラジルで採れたアメシストを加熱してシトリンの色にしたものです。ブラジルで天然のシトリンとして採れたものを指しているわけではありません。

同じ「産地」という言葉でも、どの段階の産地を指しているのかが違います。この区別をしないまま産地を語ると、話がかみ合わなくなります。

なぜブラジルの名前がよく出るのか

1粒の中に紫と黄色が同時に現れたアメトリンのルース

理由は、市場に流通しているシトリンの成り立ちにあります。

GIAによれば、天然のシトリンは自然界では稀で、市場にあるシトリンの多くは、アメシストを加熱して黄色からゴールド系へ色を変化させたものです。

そして、その加熱の対象となるアメシストが、主にブラジルで採掘されています。

流通量で見れば、市場の大部分を占めるのは「ブラジル産アメシストを加熱したシトリン」です。ですから、産地としてブラジルの名前が挙がること自体は、市場の実態を反映しています。

不正確なのは、それを「天然シトリンの主要産地はブラジル」と言い換えてしまう点です。

ボリビアのアナヒ鉱山という例外

産地の話で、もう1つ触れておくべき場所があります。

ボリビア東部、ブラジル国境の近くにあるアナヒ鉱山です。

この鉱山では、同一のクォーツ結晶の中にアメシストの紫とシトリンの黄色が同時に現れます。これをアメトリンと呼びます。GIAは、アナヒ鉱山がアメトリンの唯一の商業的な産地であるとしています。

さらに重要なのは、アナヒ産のこの色の組み合わせは天然由来であり、処理によるものではないとGIAが示している点です。同鉱山ではアメシスト・シトリン・アメトリンが産出し、アナヒ産シトリンの色は、オレンジがかった黄色から、褐色みまたは緑みを帯びた黄色の範囲とされています。

「加熱でシトリンの色になる」という話と、「地中で天然にその色になっている」という話が、同じ鉱山で並んで存在しているわけです。

関連:シトリンとアメシストの関係は、別の記事で解説しています

「マデイラシトリン」は産地を示す言葉ではありません

淡い黄色のシトリンと濃いオレンジ色のシトリンを並べた図。マデイラが色の呼び名であることを示す

シトリンを調べていると、「マデイラシトリン」という呼び方に行き当たります。

ここで、はっきりさせておきたい点があります。

「マデイラ」は、産地を示す言葉として使われているわけではありません。

ポルトガル領のマデイラ島という地名が実在するため、産地名だと受け取られることがあります。しかし市場での「マデイラ」は、濃いオレンジ系の色味を指す呼び名として使われています。マデイラ島で採れたことを意味する表示ではありません。

なお、この呼称がどこから来たのかについては複数の説明が流通していますが、当社では、由来を確定した情報としては扱っていません。確認できていないことを、確認できたかのように書かないためです。

「マデイラ」という表示から読み取れること、読み取れないこと

読み取れること読み取れないこと
おおよその色味の傾向産地
天然か、加熱によるものか
品質の等級

「マデイラ」という表示は、色を伝える言葉です。産地の証明にも、品質の保証にもなりません。

産地によって色の傾向は違うのか

淡い黄色から濃いオレンジまで、色の異なる4粒のシトリン

産地ごとに色の傾向が語られることはあります。実際、GIAはアナヒ鉱山産のシトリンについて、オレンジがかった黄色から褐色みまたは緑みを帯びた黄色という色域を示しています。

ただし、シトリンの色を考えるときには、産地よりも先に見るべき要素があります。

市場に流通するシトリンの多くは加熱によって色が変えられたものです。つまり、目の前にあるシトリンの色は、産地の特徴というより、加熱を含めた成り立ちの結果であることが多くなります。

GIAが品質の要因として示しているのは、色・クラリティ・カット・カラット重量です。産地は、そこに並ぶ項目としては挙げられていません。

当店では、シトリンの産地だけを理由に査定額を変えていません

石だけでなく貴金属や作りも含めて評価するシトリンの指輪

ここからは、当店の査定方針です。

当店では、シトリンについて、産地だけを理由に査定額を変えることはしていません。

これは「シトリンの産地には意味がない」と申し上げているのではありません。市場全体でどう扱われるかは、時期や需要によって変わり得ます。あくまで、当店が現在どう査定しているかという話です。

当店がシトリンで見ているのは、宝石そのものの状態に加えて、貴金属・作りやデザイン・ブランド・状態・鑑別書の有無・再販市場を含めた、ジュエリー全体としての評価です。

産地についても、後述するとおり店舗で証明することができません。証明できない情報を根拠に増減させれば、それは根拠のない金額になります。

関連:シトリンの査定額がどのように決まるのかは、別の記事で解説しています

ルビーやサファイアでは、なぜ産地が価格に影響するのか

ルビーとシトリンを並べた図。産地が価格に影響するかは石種によって違うことを示す

「では、産地が価格に影響する宝石はないのか」という疑問が出ると思います。あります。

市場での一般的な状況

一般に、ルビーやサファイア、エメラルド、トルマリン系の一部では、産地が価格に影響することがあります。

これらの石種では、特定の産地に結びついた品質の傾向が市場で共有されており、産地情報が価格の判断材料として機能してきました。産地を記載した鑑別レポートが取引で使われることもあります。

つまり、産地が価格に効くかどうかは、宝石の種類ごとに事情が違います。すべての色石で一律に効くわけではありません。

当店の対応

当店では、産地が価値を左右する石種については、推定として査定に反映しています。具体的には、ルビー・サファイア・エメラルド・トルマリン系などが該当します。

一方で、シトリンについては、その判断をしていません。

理由は2つあります。

1つは、シトリンで産地が価格に反映される仕組みが、上記の石種のようには確立していないためです。もう1つは、産地を確定できないためです。

産地は証明できるのか

店舗と専門機関を左右に分けた図。店舗では産地を証明できないことを示す

最後に、期待値の話をします。

店舗でできること、できないこと

店舗で産地を証明することはできません。

産地が価値を左右する石種については、外観の特徴などから推定として考慮することはあります。しかし、それは推定であって、証明ではありません。

産地を判断する検査は、専門機関の領域です。当店が科学的に産地を確定できる、ということはありません。

産地の記載がある証明書をお持ちの場合

信頼できる機関が発行した書類に産地の記載がある場合は、確定した情報として扱えます。

ただし、シトリンについては注意点があります。GIAは、シトリンにも識別のレポートを提供している一方で、一般的なシトリンの価格に対してレポート費用の負担が大きいため、シトリンでレポートが依頼されることは一般的ではないとしています。

そのため、シトリンで産地の記載がある書類をお持ちの方は、実際にはあまり多くありません。書類がないことは、シトリンでは例外的な状態ではありません。

よくある質問

母岩の上に紫の結晶が群生したアメシストの原石

Q. シトリンの主な産地はどこですか。

GIAが天然シトリンの主要な産地として挙げているのは、ボリビア・スペイン・マダガスカル・メキシコ・ウルグアイです。ブラジルは、シトリンの色へ加熱されるアメシストの主な産地です。

Q. ブラジル産のシトリンは価値が高いですか。

当店では、シトリンについて産地だけを理由に査定額を変えていません。また「ブラジル産シトリン」と呼ばれるものの多くは、ブラジル産のアメシストを加熱したものです。

Q. マデイラシトリンはマデイラ島産ですか。

いいえ。「マデイラ」は色味を指す呼び名として使われており、産地を示す表示ではありません。

Q. 産地が記載された鑑別書がありません。査定してもらえますか。

はい。シトリンでは、産地の記載がある書類をお持ちの方はあまり多くありません。書類がなくても査定できます。

Q. 産地が不明だと、査定額が下がりますか。

いいえ。当店はシトリンについて産地だけを理由に査定額を変えていないため、産地が不明であることが減額の理由になることはありません。

Q. 店頭で産地を調べてもらえますか。

産地の証明はできません。産地が価値を左右する石種については推定として考慮しますが、シトリンではその判断をしていません。

まとめ

  • GIAが天然シトリンの主要産地として挙げるのは、ボリビア・スペイン・マダガスカル・メキシコ・ウルグアイです
  • よく言われる「ブラジル産」は、加熱前のアメシストの産地です。天然シトリンの主要産地ではありません
  • ボリビアのアナヒ鉱山は、アメトリンの唯一の商業的な産地で、その色の組み合わせは天然由来です
  • 「マデイラ」は色味の呼び名であり、産地表示ではありません。由来については当社は確定した情報として扱っていません
  • 一般に、ルビーやサファイア等では産地が価格に影響することがあります
  • 当店では、シトリンについて産地だけを理由に査定額を変えていません
  • 店舗で産地を証明することはできません。産地の記載がある書類があれば、確定した情報として扱えます

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この記事は、GIA G.G.資格保有者が公開前に内容を確認しています。