ダイヤモンドの見分け方|自宅で判断できる範囲と、査定で見ている手がかり

引き出しから出てきた指輪、譲り受けたネックレス、枠から外れたまま保管していた石。透明で強く光る石を前にして、これは本物のダイヤモンドなのだろうかと考えたとき、多くの方がまず調べるのが「見分け方」です。

検索すると、息を吹きかける、水を垂らす、紙に書いた線を透かすといった方法が並んでいます。手元ですぐ試せそうに見えますが、これらの方法で本物かどうかを確定することはできません。

米国宝石学会(GIA)は、この点をはっきりと書いています。

「お手持ちの宝石が天然ダイヤモンドなのかその他の素材なのかを知るための、簡単で信頼できる自宅で行える検査はありません」

(GIA「ダイヤモンドが本物かどうかを見分ける方法」)

そして現在、判別をいちばん難しくしているのは、ガラスやジルコニアのような模造石ではありません。合成ダイヤモンド(ラボグロウンダイヤモンド)です。合成ダイヤモンドは天然と成分も結晶構造も同じで、光学的・物理的な性質まで同一です。見た目で区別する手立てが、原理的に存在しません。

この記事では、自宅で判断できるのはどこまでで、どこから先が判断できないのかという線を引きます。そのうえで、査定の場で実際に何を手がかりにしているのかをお伝えします。

自宅で「本物かどうか」を確定することはできません

透明なダイヤモンドのルースを指先でつまみ、光にかざして見ているところ

先に結論をお伝えします。

自宅で行える方法で「本物のダイヤモンドである」と確定することはできません。

自宅で判断できるのは、「明らかに別の素材ではなさそうだ」という手前までです。

しかも、その確認方法のなかには石を傷めるものが含まれています。

理由は2つあります。

1つ目は、自宅で使える手がかりが「見た目」に限られること。

きらめきは、ダイヤモンドだけのものではありません。GIAは、合成モアッサナイト・合成キュービックジルコニア・無色の天然ジルコンといった「ファセット加工された宝石なら何にでもきらめきを見ることでしょう」としています。光っているという理由だけでは、素材を絞り込めません。

2つ目は、合成ダイヤモンドの存在です。

合成ダイヤモンドは化学的にダイヤモンドそのものであり、天然と光学的・物理的特性が同一です。見た目を根拠にする方法は、この違いに対して最初から無力です。

そのため本記事では、確認方法を並べて「これで判別できます」とはお伝えしません。判別できる範囲と、できない範囲を分けることを目的にします。

よく紹介される確認方法が、どこまでのものか

自宅で紹介される3つの確認方法と、それぞれが使えない理由を並べた図

上位に並ぶ記事の多くは、複数の自宅テストを列挙しています。ただ、それぞれがどこまでの精度を持つのかまで書かれていることは、ほとんどありません。GIAは主要なものについて、次のように評価しています。

方法GIAの評価
紙やすりで削る「これは破壊検査であり、絶対に試してはいけません!」 紙やすりが宝石の表面を磨耗し、その価値を減少させてしまう
息を吹きかける(呼気テスト)「この検査では常に同じ結果が示されるとは限りません」
紙に書いた線を透かす(新聞検査)「熟練したジェモロジストであれば素早く結果を得ることができますが、経験の浅い方にとっては非常にわかりにくく誤解を招く恐れがあります」

3つの評価は、それぞれ意味が違います。

紙やすりを使う方法は、やってはいけない方法です。

ダイヤモンドはモース硬度10で、スケール上で最高の硬さを持ちます。この硬さを利用して「傷がつかなければ本物」と判定させる方法が紹介されることがありますが、もし本物でなければ、その石は削れて元に戻りません。判定のために品物を壊していることになります。

呼気テストは、結果が安定しません。

石の温度・室温・湿度・表面の油分といった条件で曇り方が変わります。同じ石でも、試すたびに違う印象になることがあります。

新聞検査は、読み取りに経験が要ります。

「本物なら文字が読めない」という単純な説明で紹介されがちですが、カットの深さやテーブル面の大きさによって見え方は変わります。判断できるのは、その差を日常的に見ている人です。

なお、ダイヤモンドはセッティングに使われるあらゆる貴金属を傷つけうる硬さを持っています。石を台座から外して確かめようとする行為も、枠を傷める可能性があります。確認のために品物へ手を加えることは、いずれの方法でもお勧めしません。

ダイヤモンドに似た石は、成分から違う別の素材です

ダイヤモンド・モアッサナイト・キュービックジルコニアの3粒を並べ、見え方の違いを示した図

ダイヤモンドに似せて使われる素材は「模造石」と呼ばれます。GIAの定義は次のとおりです。

「別の宝石のように見えるためその代替品として使用されるものの、非常に異なる化学組成、結晶構造、光学的特性および物理的特性を有する素材」

つまり模造石は、見た目が似ているだけで、中身はダイヤモンドではない別の素材です。代表的なものは2つあります。

モアッサナイト

炭化ケイ素の結晶で、ダイヤモンドに非常に近い見え方をします。ただし光学的な性質には差があり、GIAは次の2点を挙げています。

  • ダイヤモンドに比べて2倍以上のファイアを示し、わずかに強いブリリアンスを放つ
  • 複屈折性である点においてダイヤモンドとは視覚的に異なるため、バックファセットが二重に見えるかもしれない

ファイアとは、白い光が虹色に分かれて見える現象です。モアッサナイトはこれが強く出ます。また複屈折性のため、石を通して奥のファセットの稜線が二重に見える場合があります。ダイヤモンドは単屈折で、この二重像が出ません。

ただし、この差は倍率をかけて特定の角度から見て、はじめて読み取れる範囲のものです。指輪にセットされた状態を肉眼で見て断定できるものではありません。

キュービックジルコニア(CZ)

こちらもダイヤモンドに似せて広く使われてきた素材です。GIAは次の2点を挙げています。

  • モース硬度は8.5。ダイヤモンドほどではないものの、硬く耐久性のある宝石である
  • 時間の経過とともに黄色になる

古いジュエリーで、透明だったはずの石がわずかに黄ばんで見える場合、CZの経年変化である可能性があります。ただし、天然ダイヤモンドにも黄色みを帯びたものはあります。色だけを根拠に素材を決めることはできません。

模造石と合成ダイヤモンドは、まったく別の話です

ここが、多くの記事で混ざっている点です。

何であるか天然ダイヤモンドとの関係
模造石(モアッサナイト・CZ・ガラス)ダイヤモンドではない別の素材化学組成・結晶構造・光学的特性・物理的特性が非常に異なる
合成ダイヤモンドダイヤモンドそのもの化学成分・結晶構造が基本的に同じ。光学的・物理的特性も同一

「偽物」という一語でこの2つをまとめてしまうと、判別方法も評価も別であるという事実が見えなくなります。次の章で、合成ダイヤモンドを分けて扱います。

合成ダイヤモンドは「偽物」ではありません

天然ダイヤモンドと合成ダイヤモンド、模造石を分類して示した図

まず、名称を整理します。中央宝石研究所(CGL)は次のように定義しています。

「同種の天然石が存在する人工生産物は『合成石』であり、人工的に製造されたダイヤモンドは合成ダイヤモンドと呼称します。また、天然に対応物が存在しない人工結晶は『人造石』である」

ラボグロウンダイヤモンド、人工ダイヤモンドといった呼び方も使われますが、宝石学上の呼称は「合成ダイヤモンド」です。そして重要なのは、その中身です。

「化学成分や結晶構造は天然ダイヤモンドと基本的に同じで、光学的・物理的特性も同一です。天然ダイヤモンドも合成ダイヤモンドも炭素だけでできており、熱伝導性はきわめて高く、屈折率は2.417」

(中央宝石研究所 CGL通信 vol.49)

合成ダイヤモンドは、ダイヤモンドです。ガラスやジルコニアのように「似せた別の素材」ではありません。硬さも輝きも屈折率も、天然と同じ数値を持ちます。

作り方は2通りあります。

製法内容
HPHT法(高温高圧法)地球深部で天然ダイヤモンドができる高温高圧の環境を人工的に再現する。1500℃程度・5〜6GPa
CVD法(化学気相蒸着法)高温低圧下で、メタンガスなどの炭素を主成分とするガスから作る。スライスした種結晶の上に炭素原子を沈積させていく

成り立ちだけが違い、できあがった結晶は天然と同じ物質です。

したがって、手元の石が合成ダイヤモンドだったとしても、それは「偽物をつかまされた」という話ではありません。素材としては本物のダイヤモンドです。ただし、買取の評価は天然とは別の基準で行われます。ここは判別とは別の論点になるため、本記事では扱いません。

見た目でも熱伝導でも、合成と天然は区別できません

ダイヤモンドの原石とカット済みのルースを並べ、形からの識別が使える範囲を示した図

前の章の事実から、判別についての帰結が導かれます。

見た目では区別できない

CGLは、識別が可能な状態と不可能な状態を分けて説明しています。

  • 原石の状態では、結晶の形態が天然とは異なるため識別できる
  • しかし「これらが宝飾用にカット・研磨された後では結晶の形態からは天然と識別ができなくなってしまい」ます

私たちが手にするダイヤモンドは、ほぼすべてがカット済みです。つまり、実務上ぶつかる場面では、形からの識別はすでに使えません。

熱伝導を利用した方法でも区別できない

ダイヤモンドの真贋確認には、熱の伝わり方の違いを利用する方法が古くから使われてきました。ダイヤモンドは熱伝導性がきわめて高く、ガラスやCZとは差が出るためです。

ところが合成ダイヤモンドも、天然と同じく熱伝導性がきわめて高いとCGLは記しています。物質として同じである以上、当然の帰結です。熱の伝わり方を手がかりにする方法では、合成ダイヤモンドと天然ダイヤモンドを分けられません。

これは方法の精度が足りないという話ではなく、その手がかりでは原理的に差が出ないという話です。

では、何で区別されているのか

GIAは、分光技術を用いた選別機器 iD100 を開発しています。GIAによれば、この装置はHPHT・CVDの両方の合成ダイヤモンドと、キュービックジルコニアやモアッサナイトを含むすべての類似石を、天然ダイヤモンドから確実に選別できるとされています。

ここで押さえておきたいのは、天然と合成の区別には、光の当て方を変えて内部を分析する専用の技術が要るという点です。目で見て、あるいは石に触れて確かめる方法の延長線上には、この判別はありません。

査定では、何を手がかりに見ているのか

査定で確認材料として使うものを4つ挙げ、中央のダイヤモンドへつないだ図

では、査定の場では何をしているのか。「石種を確定させる作業」ではなく、「確認材料を集める作業」をしています。

SHINKAでは、品物や確認したい内容に応じて、次のようなものを確認材料として使用することがあります。

確認材料何を見ているか
石そのものの観察色・透明度・内包物の入り方・カットの状態・エッジの摩耗・表面のキズ
UV・特殊光源光源を変えたときの反応の違い
比重測定素材によって重さの傾向が違うこと。確認材料の一つとして使用します
ダイヤモンドテスター熱の伝わり方の傾向。ただし前章のとおり、合成ダイヤモンドと天然の区別には使えません
鑑別書・鑑定書信頼できる鑑別機関が発行したものであれば、記載された石種を重要な確認根拠として扱います

これらはそれぞれ単独では決め手になりません。複数の手がかりが同じ方向を指しているかどうかを見ています。

なぜ「複数を合わせて見る」のか

模造石の判別であれば、比重や熱の伝わり方の傾向が大きく違うため、確認材料はそろいやすくなります。一方で合成ダイヤモンドは、これらの手がかりのすべてで天然と同じ結果を示します。

つまり査定の場でできるのは、

  • 模造石の可能性が高いかどうかを確認材料から判断すること
  • ダイヤモンドである可能性が高いと判断したうえで、天然か合成かの確定は鑑別機関へ委ねること

この2つに分かれます。どこまでが査定の範囲で、どこからが鑑別の範囲なのかを、はっきりさせておくことが大切です。

手がかりがそろっても、その場で断定はしません

外観がほとんど同じ3粒のラウンドブリリアントカットのルースを並べたところ

確認材料が複数そろっても、外観と簡易的な確認だけで石種を断定することはしません。

理由は3つあります。

1つ目は、外観が重なる素材が実在するため。

モアッサナイトのファイアの強さも、複屈折による二重像も、条件がそろわなければ読み取れません。逆に、天然ダイヤモンドでもカットや状態によって見え方は変わります。

2つ目は、合成ダイヤモンドが外観で分けられないため。

これは前章のとおりです。確認材料をどれだけ増やしても、この一点は解決しません。

3つ目は、断定が売却の判断を誤らせるため。

「本物です」と言われて手放した石が合成だった場合も、「偽物かもしれません」と言われて処分した石が天然だった場合も、取り返しがつきません。断定できないことを断定しないほうが、結果的にお客様の判断材料になります。

GIA自身も、最も信頼できる方法として「訓練されたジェモロジストに相談するか、独立した宝石研究所に送って分析を依頼すること」を挙げています。専門の目と、専門の機器。この2つを分けて考える必要があります。

判別が必要なとき、どこへ持っていけばよいか

ダイヤモンドを持ち込んでから鑑別へ進むまでの3ステップを示した図

石種が判断できない状態のままで問題ありません。判別できていないことは、査定をお受けできない理由にはなりません。

持ち込み先は、目的によって変わります。

目的持ち込み先
天然か合成かを書面で確定させたい鑑別機関。分析にもとづく鑑別書が発行されます
売却するといくらになるかを知りたい買取店。確認材料をそろえたうえで評価します
そもそも何の石か見当もつかないどちらでも可。まず買取店で確認材料を集め、必要なら鑑別機関へ進む流れが一般的です

SHINKAでは、鑑別が必要と判断した場合、鑑別機関へお出しする案内をしています。自店の確認は、あくまで買取査定のための確認材料です。鑑別機関と同等の分析を行うものではありません。

お持ちいただく際は、次の状態でかまいません。

  • 鑑別書・鑑定書がない
  • 枠から石が外れている
  • 何の石か判別できていない
  • 古くて表面にキズがある

確認のために、ご自身で石を削ったり枠から外したりしないでください。先に手を加えてしまうと、評価できたはずの価値が下がることがあります。そのままの状態でお持ちいただくのが、いちばん確実です。

まとめ

ダイヤモンドの見分け方として紹介される自宅テストは、本物かどうかを確定させるものではありません。GIA自身が「簡単で信頼できる自宅で行える検査はありません」としており、紙やすりを使う方法は破壊検査として明確に禁じられています。

判断の全体像は、次のように整理できます。

確認したいこと自宅で判断できるか
明らかに別の素材ではないか手がかりは得られるが、確定はできない
モアッサナイト・CZとの違い専用の確認が必要。肉眼では断定できない
天然か合成ダイヤモンドか判断できない。光学的・物理的特性が同一のため

そして、いま最も判別が難しいのは合成ダイヤモンドです。成分も結晶構造も天然と同じであり、見た目でも熱の伝わり方でも分けられません。この一点だけは、確認方法を増やしても解決しません。

次に確認していただきたいことは1つです。手元の石に、確認のための手を加えないこと。そのままの状態であれば、確認材料はいくつも残っています。判別できていない状態のまま、そのままお持ちください。

出典

\ 鑑定士に直接相談してみませんか? /

ご予約はスマホ1つで完了!

スマホから 最短30秒 で来店予約

この記事は公開前にGIA G.G.資格保有者が確認しています。

シトリンの天然と加熱の見分け方|見た目だけで断定できない理由と、確認できる範囲

「このシトリンは天然なのか、それとも加熱されたものなのか」

インターネットで調べると、色の出方や濃淡を見れば判断できる、という説明が数多く見つかります。

ただ、結論から申し上げます。天然のシトリンか、加熱によって色が変わったシトリンかを、見た目だけで断定することはできません。これは知識や経験の量の問題ではなく、判別しようとしている対象そのものの性質によるものです。

この記事では、なぜ判別が難しいのか、よく紹介されている見分け方がどこまで通用するのか、合成やガラスとの違いはどう考えるのか、そしてどこからが鑑別機関の領域なのかを、順に整理します。

天然か加熱かは、見た目だけでは断定できません

天然のシトリンと加熱したシトリンを並べた比較図。見た目に差がないことを示す

最初に、この記事の結論を明確にしておきます。

シトリンについて「天然か、加熱か」を目視だけで確定する方法は、現時点で一般的な判定ルールとして確立していません。

宝石を扱う立場からも、色の出方や濃淡から傾向を読み取ることはあります。しかし、それは傾向であって、断定ではありません。

これは一見すると後ろ向きな話に聞こえるかもしれません。ただ、判別できないものを「判別できる」と説明してしまうと、その先の判断がすべて不確かな前提の上に積み上がります。まず、どこまでが確認できる範囲なのかを正確に把握することが出発点になります。

なぜ判別が難しいのか

紫のアメシストと黄色のシトリンを矢印でつないだ図。加熱で色が変わる同じ鉱物であることを示す

判別が難しい理由は、大きく2つあります。

加熱されたシトリンも、鉱物としては同じクォーツだから

シトリンはクォーツ(水晶)の一種です。トパーズとは別の鉱物です。

GIAによれば、天然のシトリンは自然界では稀で、市場に流通しているシトリンの多くは、アメシストを加熱して黄色からゴールド系へ色を変化させたものです。スモーキークォーツの加熱によってライム色系のシトリンが得られる例も示されています。

ここが重要な点です。加熱によって色が変わったシトリンも、鉱物としてはクォーツそのものです。別の物質に置き換わったわけではありません。

つまり、天然のシトリンと加熱されたシトリンは、もともと同じ鉱物どうしです。同じ鉱物の色の由来を、外から見た様子だけで切り分けようとしている、というのがこの問題の構造です。

比較の基準になる天然シトリンが、そもそも少ないから

天然のシトリンは稀である、というのがGIAの説明です。

判別の基準は、通常「典型的な天然の状態」と「典型的な処理後の状態」を比べることで成り立ちます。ところが、比較の一方である天然シトリンの流通量が限られているため、一般向けの判定ルールとして固定できるほどの共通の型が定まっていません。

「難しい」というのは、経験を積めば解決する種類の難しさではなく、判別の前提が揃っていないという意味での難しさです。

よく紹介される「見分け方」の限界

縁が欠け、内部に割れが入った黄色いシトリンのルース

シトリンの見分け方として、次のような方法が紹介されることがあります。

  • 無色から黄色へのグラデーションがあるかどうかで判断する
  • 色の濃淡のむらの出方で、加熱由来かどうかを判断する

これらについて、当社は天然かどうかを判定する根拠としては扱っていません。

理由は単純で、信頼できる資料のなかに、これらを一般的な判定指標として確認できる記述がないためです。個々の石で結果的に傾向が一致することはあり得ますが、それは「その石がそうだった」ということであって、「その特徴があれば天然である」という規則ではありません。

宝石の判別では、この2つを混同しないことが特に重要になります。「多くの天然石にこの特徴がある」ことと、「この特徴があれば天然である」ことは、まったく別の命題です。前者が正しくても、後者は成り立ちません。

自分で試す判別方法は、おすすめしません

硬いもので引っかいて傷のつき方を見る、加熱してみる、といった方法が紹介されていることもあります。

これらはお試しにならないでください。

シトリンのモース硬度は7で、ジュエリーに使える耐久性を持つ石ですが、GIAは急激な温度変化によってフラクチャー(割れ)を起こすことがあると説明しています。また、強い光に長時間さらすと退色する場合があることも示されています。

判別を試みた結果として石を傷めてしまえば、その損傷は元に戻りません。そして、それだけのリスクを負っても、天然か加熱かは確定しません。

合成シトリン・ガラスとの違いには手がかりがあります

1粒のシトリンから2つの問いへ線が伸びる図。天然か加熱かという問いと、クォーツかどうかという問いの性質の違いを示す

ここまでは「天然か、加熱か」の話でした。これとは別に、「そもそもクォーツなのか」という問いがあります。

この2つは、判別の難しさがまったく違います。

問い比べているもの判別の性質
天然か、加熱か同じクォーツどうし同じ鉱物の色の由来を切り分ける
クォーツか、それ以外か別の物質どうし物質そのものの性質を比べる

後者には、確認の手がかりがあります。

GIAは、合成クォーツ由来の合成シトリンが存在することを示しています。また、ガラスや、複数の素材を貼り合わせた石が、色の似た宝石として流通することもあります。

これらはクォーツとは別の物質であるため、物質としての性質を見れば違いが現れます。そのため、光の当て方を変えて内部の様子を確認したり、比重を測ったりすることが、確認の材料になります。

ただし、ここでも注意が必要です。手がかりがあることと、店頭で確定できることは別です。合成クォーツは天然のクォーツと同じ化学組成を持つため、確定的な結論を出そうとすれば、それは鑑別機関の領域になります。

当店が確認していること、断定していないこと

確認することと断定しないことを左右に分けた図。石の性質は見るが天然か加熱かは断定しないことを示す

ここからは、当店の実務の話です。

当店が確認していること

お品物や確認したい内容に応じて、UV・特殊光源や比重測定などを、確認材料として使用することがあります。

これらは、その石がどのような性質を持つのかを見るためのものです。特定の石種の判別に必ず使う手順として決まっているものではありません。

すでに信頼できる鑑別機関の鑑別書がある場合は、記載された石種を重要な確認根拠として扱います。

当店が断定していないこと

当店では、処理の有無を傾向として見ることはありますが、店頭で断定はしていません。

比重測定についても、位置づけを正確にお伝えしておきます。比重は「クォーツかどうか」を見る確認材料の一つであり、同じクォーツどうしである天然と加熱の判別に使えるものではありません。

当店が「見た目で判別できます」と申し上げないのは、確認の手間を省いているからではありません。現時点の根拠では断定できない、というのが正確な状態だからです。

確実に知る方法と、その費用対効果

小さなケースに入ったまま保管されている黄色いシトリンのルース

「では、確実に知る方法はあるのか」という疑問が残ると思います。

市場の一般的な状況

鑑別機関へ依頼すれば、専門的な検査によって石の性質を確認できます。GIAはシトリンについても Colored Stone Identification Report を提供しています。

ただしGIAは同時に、一般的なシトリンの価格に対するレポート費用の関係から、シトリンでレポートが依頼されることは一般的ではないとしています。

これは費用の問題です。石そのものの評価額に対して検査費用の比重が大きくなりやすいため、市場全体として、シトリンでレポートを取得する慣行が定着していません。

当店の対応

当店では、シトリンの一般的な価格帯において、当店から外部の鑑別機関へ依頼することは基本的にありません。

すべてのお品物を外部鑑別に出しているわけではなく、査定額への影響が限定的な価格帯については、すでにお持ちの鑑別書があればその内容を参考にしたうえで査定しています。

これは手を抜いているという意味ではありません。検査費用がお客様の受け取る金額を上回ってしまえば、その検査はお客様の利益になりません。費用に見合うかどうかを含めて判断しています。

天然か加熱か不明なままでも査定できます

ルース・指輪・石が外れた台座という状態の違う3点のシトリン

ここが、この記事でもっともお伝えしたい点です。

天然か加熱か判別できていない状態のまま、お持ちいただいて構いません。

当店では、天然・合成・模造のいずれか判別できていないお品物でも、査定・ご相談をお受けしています。鑑別書がなくても査定できます。

理由は2つあります。

1つは、天然か加熱かが、シトリンの評価を決める唯一の要素ではないためです。当店では、加熱されていることだけを理由に減額することはありません。GIAが示すとおり市場に流通するシトリンの多くは加熱されたものであり、それは例外ではなく標準的な状態です。一方で、着色や染色のように市場評価に影響する処理については、査定額へ反映します。

もう1つは、判別はお客様の仕事ではないためです。お客様が事前に石の素性を確定させなければ相談できない、という前提そのものが、実務には合っていません。

査定料は無料です。売却を決めていない段階のご相談だけでもお受けしています。

関連:シトリンの査定額がどのように決まるのかは、別の記事で解説しています

よくある質問

クォーツではない、黄色いガラスでできた玉

Q. シトリンの本物と偽物の見分け方を教えてください。

「偽物」という言葉には、2つの異なる意味が含まれています。加熱によって色が変わったシトリンは、鉱物としては本物のクォーツです。一方、ガラスや別の物質でできたものは、クォーツではありません。前者を見た目で判別することはできませんが、後者には確認の手がかりがあります。ご相談の際は、この2つを分けてお伝えします。

Q. 加熱されたシトリンだと、価値がなくなりますか。

いいえ。当店では、加熱されていることだけを理由に減額しません。市場に流通しているシトリンの多くが加熱されたものであることは、GIAも示しています。

Q. 非加熱のシトリンなら高く売れますか。

シトリンについては、非加熱であることが市場価格を押し上げる仕組みが定着しているとは考えていません。そのため当店では、非加熱であることを前提とした上乗せの案内はしていません。

Q. 鑑別書がありません。査定してもらえますか。

はい。鑑別書がなくても査定できます。すでにお持ちの場合は、記載内容を重要な確認根拠として扱います。

Q. 自分で見分ける方法を試してもよいですか。

おすすめしません。急激な温度変化で割れが生じることがあり、強い光に長時間さらすと退色する場合もあります。石を傷めるリスクを負っても、天然か加熱かは確定しません。

Q. 加熱かどうか、はっきりさせてから持ち込むべきですか。

その必要はありません。判別できていない状態のままお持ちください。

まとめ

  • 天然のシトリンか加熱されたシトリンかを、見た目だけで断定することはできません
  • 理由は、両者が同じクォーツという鉱物どうしであり、比較の基準となる天然シトリンが稀であるためです
  • よく紹介される色のグラデーションや濃淡による判別を、当店は天然性の判定根拠として扱っていません
  • 一方、クォーツかそれ以外かという問いには確認の手がかりがあります。ただし確定は鑑別機関の領域です
  • 当店は処理を傾向として見ますが、店頭で断定はしません
  • シトリンの一般的な価格帯では、鑑別レポートの取得が費用に見合わないことが多いのが実情です
  • 判別できないままお持ちいただいて構いません。査定料は無料で、ご相談だけでもお受けしています

\ 鑑定士に直接相談してみませんか? /

ご予約はスマホ1つで完了!

スマホから 最短30秒 で来店予約

この記事は、GIA G.G.資格保有者が公開前に内容を確認しています。